瀬戸VS萩野の3年ぶり「ガチンコ勝負」 ともに苦難乗り越え
東京オリンピック代表選考を兼ねた競泳の日本選手権第6日は8日、五輪会場の東京アクアティクスセンターで行われた。男子200メートル個人メドレーは2019年世界選手権金メダルで既に代表入りを決めている瀬戸大也(26)=TEAM DAIYA=が1分57秒41で2年ぶり2度目の優勝。萩野公介(26)=ブリヂストン=は1分57秒43で2位に入り、日本水泳連盟が設定する派遣標準記録(1分57秒98)を突破し代表権を獲得した。 競泳ファンが待ち望んでいた萩野と瀬戸の「ガチンコ勝負」が、日本一を決める日本選手権では3年ぶりに実現した。19年は萩野が休養に入り、20年は瀬戸が活動停止処分を受け欠場していた。 400メートル個人メドレーでダブル表彰台を達成した16年リオデジャネイロ五輪。その後の2人の歩みは、実に対照的だった。金メダルを獲得した萩野はプロスイマーに転向したものの、右肘手術の影響もあり、思うような結果を残せずにいた。モチベーション低下を理由に19年3月に休養を公表。五輪出場すら危ぶまれ、崖っぷちに立たされた。 リオで萩野に敗れ銅メダルだった瀬戸は練習メニューだけでなく、食生活の改善にも取り組みレベルアップを図った。19年世界選手権では個人メドレー2冠を達成し、早々と東京五輪の出場権を獲得した。 瀬戸が絶対的に優位に立って迎えた20年五輪イヤー、新型コロナウイルスの感染拡大による運命のいたずらが2人の明暗を分けた。五輪は、4月の代表選考会を目前にして1年延期が決まった。 受け止めは違った。瀬戸は自身のツイッターで「喪失感で抜け殻になりました。気持ちを切り替えて『来年頑張ります』なんて言えなかった」と胸の内を明かした。昨年10月には自身の不倫問題を認め、日本水泳連盟から活動停止処分を受けた。 一方の萩野は「もし今年五輪があれば、僕自身は厳しかった」と正直な思いを明かした。再び巡ってきた昨年の開幕1年前の時には「『もう1年』ではなく『まだ1年』と思える。昨年とは違うメンタリティー」と明るさを取り戻した。 今大会は萩野が不安の残る400メートル個人メドレーを回避したため、200メートル個人メドレーに限り直接対決が実現した。準決勝を全体1位で通過した萩野は「本命種目。(決勝は)全力でいく」。2位の瀬戸は「(萩野)公介との勝負を楽しみたい」。互いに認め合うライバル対決を心待ちにしていた。【村上正】 ◇瀬戸の話「2人で盛り上げたい」 (萩野)公介とレースをするのはすごく楽しいし、刺激ももらう。2人で代表権を勝ち取ったので、夏の本番も2人で良いレースをして日本を盛り上げたい。五輪に向けてはタイムはまだまだなので、もう少し時間がほしい。夏までにもっとレベルアップして、(五輪の)初日から安心して見てもらえるように強化したい。 ◇萩野の話「燃えすぎて力んだ」 素直に五輪の代表権を獲得することができてうれしい。昨日、2人でどんなレースになるかと話した時に、最後の自由形で泥仕合になるだろうと話していた。最後は負けてしまったが、今の力は出し切れた。燃えすぎて、最初のバタフライで力んでしまった。久しぶりに2人で泳いで楽しかった。全力で夏に向けて仕上げていく。