「そんなサッカーに未来はない」(1) 「欧州スーパーリーグ構想に絶対に反対する」
欧州スーパーリーグ構想に反対する。絶対に反対する。現代サッカーがかかえる最大の「悪」を具現化するもの、それが欧州スーパーリーグである。FIFAが計画する「24クラブによるクラブワールドカップ」も目的は同じだ。テレビやスポンサーから入ってくる巨額の資金を追いかけるばかりでは、サッカーに未来はない――。 【動画】退団騒動のあったメッシは活躍したが…
■後藤健生さんはああ言うけれど
10年以上も前、後藤健生さんと私は、まだ週刊だった『サッカー・マガジン』の誌上で「公開討論」のような連載のリレーコラムをやっていた。1号交代で交互に意見をぶつけ、サッカー界のいろいろな側面を考える材料にしてもらおうという企画だった。 1998年に伊東武彦さんが編集長になるにあたり、「何か書いてほしい」と相談にきた。そのとき私が「後藤さんと議論し合うような連載はどうだろう」と提案し、トントン拍子で決まった。後藤さんと私は、「サッカー観」が少し違う。同じように考える部分もあるが、かなり隔たった意見をもつポイントがけっこうある。伊東編集長が「ああいえば、こう蹴る」とタイトルをつけてくれたコラムは、私にとっては楽しい仕事だった。 だが、このサイトで不定期で行っている後藤さんとの「対談」では、そうした「サッカー観の違い」があまり出ていないような気がしていた。どちらも相手の意見に賛同するような形で自分の意見をかぶせるような展開が多かったように感じていた。互いに70歳近くになり、丸くなってしまったのだろうか。 しかし1月26日付けで本サイトで公開された後藤さんの記事「誰が横綱を倒すのか?」を読んで、久しぶりに後藤さんの意見に反論を書いてみたくなった。「いずれは実現すると思っている」と後藤さんが書く「欧州スーパーリーグ」構想である。私は、この構想は現代のサッカーがかかえる最大の「悪」の極致にあるものであり、絶対に反対の意見をもっている。
■レアル・マドリードがUEFAを突き上げた
欧州スーパーリーグ構想の始まりは1998年だった。「より多くの強豪同士の試合を実現するにはどうしたらいいか」というイタリアの広告代理店の発案だったが、このときには欧州サッカー連盟(UEFA)がそれまで行われていた「カップウイナーズ・カップ」を廃止し、UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)出場チーム数を24から32に増やして強豪国には出場権を4クラブに広げたことで沙汰やみとなった。 次に話題になったのは2009年である。レアル・マドリード会長のフロレンティノ・ペレスが「欧州スーパーリーグ創設を」と訴えたのである。UCLでは、レアルから見れば「弱小チーム」との対戦も多く、強豪同士の対戦、たとえばマンチェスター・ユナイテッドやバイエルン・ミュンヘンを相手にしたときと比較して、ファンの関心が薄いことに業を煮やしたのである。このときの彼の言葉に、欧州スーパークラブ推進派の本音が表れている。 「The best always play the best.」 「最高のチームは、常に最高のチームと試合をするのだ」 彼は、UEFAが強豪クラブ同士の試合を増やす方策をとらないなら、欧州の強豪クラブを集めてUCLから抜け、「欧州スーパーリーグ」をつくると宣言した。