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母国イングランドに刻まれたDNA。リバプールにも通じる「ロングパス戦法」を支える思想

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『戦術リストランテVI』発売記念!西部謙司のTACTICAL LIBRARY特別掲載#1

フットボリスタ初期から続く人気シリーズの書籍化最新作『戦術リストランテVI ストーミングvsポジショナルプレー』 発売を記念して、書籍に収録できなかった西部謙司さんの戦術コラムを特別掲載。「サッカー戦術を物語にする」西部ワールドの一端を味わってほしい。 文 西部謙司  フットボールの母国、イングランドといえば「ロングパス戦法」だった。スコットランドの「ショートパス戦法」とのコントラストは最初の国際試合から明確だったという。  なるべく早く相手ゴール前に到達するための手段としてのロングパスはイングランドの伝統であり、やがて「ダイレクトプレー」に行き着いた。パスの本数はゴールの確率と反比例する、手数をかけずにゴール前へというダイレクトプレーはイングランドの国是となり、1966年W杯優勝はその最大の成果だろう。現在のリバプールも考え方としてはこの流れを汲んでいる。

トルシエの「ウェーブ」の意味

 日本代表監督だった頃のフィリップ・トルシエは、「15秒の攻防が200回繰り返されるのがフットボール」という認識の下、「練習のミニゲームでも15秒以上キープした時は止める。そんな状況は実際の試合では起こらないからだ」と話していた。  ボールを奪ってから15秒でフィニッシュするには、ボールを奪う位置を相手ゴールへ近づけること。そうでなければロングパスを使うことになる。現在のリバプールはロングパスで相手ゴールに近づき、相手ゴールにより近い位置での奪回を狙っている。ハイプレスとロングパスの循環を作っているわけだ。  トルシエ監督は「ウェーブ」を使っていた。FWが逆サイドのDFの外へ回り込んでロングパスを受ける動きだ。これだけがウェーブではないが、ボールサイドへプレスしている相手のどこにスペースができているかを想定した攻撃方法である。プレッシングが世界的に普及していた当時、この一発で裏を取る攻撃ルートはセットとして考えられていた。日本代表では中村俊輔、三都主アレサンドロ、小野伸二など、左サイドにロングパスの名手を起用して、右側のウェーブにボールを届ける形があった。  ロングパスは縦方向だけでなく、斜めもあれば、クロスボールやサイドチェンジという形での横もある。  CBから対角のロングパスは定番だった。ボールと反対サイドのDFは中へ絞ってポジションを取る。対角ロングパスなら、コンパクトな守備ブロックを通らず、なおかつ相手の最終ライン近くへボールを運べる。プレッシングの主戦場がハイプレスからミドルプレスへ移行した時期に必須と言えるルートになっていた。ティエリ・アンリのようなスピードスターがいればそのままゴールへという攻撃も可能である。

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