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吉村知事語る「なぜ西浦モデルを誰も批判しないのか」 “42万人死亡”検証の必要性問う

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デイリー新潮

西浦モデルに批判的検証を

 最も検証すべき対象は、言うまでもない。 「第1波を必死に抑え込もうとした大本は、やはり西浦モデルです。人と人との接触を8割削減しなければ感染者は指数関数的に増え、取り返しがつかなくなると言われ、緊急事態宣言を出して抑え込むことになった。いま振り返ると、感染のピークは3月28日だったとわかります。でも、すでにピークアウトしていた4月15日、8割削減しなければ42万人が死ぬ、という試算が出された。当時、まだ新規感染者数が増えていたので、42万人死ぬと言われたら当然、抑え込もうという話になります。5月1日の専門家会議でも“8割削減が十分でない、6割削減では感染者はこのくらいしか減らない”という西浦モデルが登場し、緊急事態宣言を1カ月延長しよう、ということになりました。それは違うのではないかと僕は感じて、出口戦略を示すために“大阪モデル”を作り、国にもいろいろ働きかけた。その結果、宣言が5月末まで漫然と延びることは避けられました」  その時点で、数々の疑いが、知事の心中に噴出していたようなのだ。 「5月末時点から振り返れば、すでに収束している状況で緊急事態宣言の延長を決めていた。感染症対策の観点だけで見るならともかく、それが本当に正しかったのか。検証が必要だと思います。また、仮にもう1カ月再延長していたら、社会、経済を止めるダメージがさらに甚大になった。そこに対し“敬意をもった批判的検証”を、というのが僕の考えで、次の波に備えて検証しないまま同じことを繰り返せば、日本は国家として危機的状況に陥ると思う。ですので、西浦モデル以外の指標がないかと検討し、そのなかでK値モデルが出てきたのです」  大阪大学核物理研究センター長の中野貴志教授が考案した「K値」。直近の感染者数を累積感染者数で割り、感染拡大率の減速を示す指標で、簡単に述べると、K値を見るかぎり日本では、感染は自然減の傾向が強く、自粛の効果が見られないという。  知事の話を続ける。 「僕がK値に注目したのは、数字がすごく合っていたからです。西浦モデルはそうなっていません。“42万人死ぬ”とおっしゃいましたが、実際には900人です。現実に8割削減できたのかどうか僕らにもわかりませんが、緊急事態宣言が延長されたということは、8割に届いていなかったのだと思う。でも42万人、亡くなっていません。それなのに、西浦モデルがどのように計算されたのか、専門家がだれも批判しません」  国の専門家会議は、傷をなめ合う仲良しクラブになってしまっている、ということだろうか。 「国の経済を全部止めるのは、コロナに感染しなくても仕事が失われる人がたくさん生じる以上、国家が沈没するかどうかというくらいの重大局面だと思います。だから、なにがどこまで必要なのか、しっかり検証する必要があるのに、批判的な意見を言う人がだれも出てこない。そこに僕は危機感を抱いています。“ああすべきじゃなかった”という文句ではなく、学術的にどうなのかという専門家同士の議論を、ぜひオープンな場でやってほしい。未知のウイルスだったのだから、自粛が無駄だったとは思いません。しかし西浦モデルだけに頼らず、K値やそれ以外の指標があるなら、それも含めて知恵を出し合って国の方向性を決めるべきでしょう。そうしておかないと、新たな波が来たときジタバタして、また西浦モデルに頼り、8割削減しないとこうなる、というグラフを見せられ、何十万人死にます、と言われたら、もう1回自粛しよう、となると思う。でも、それでいいのか。落ち着いているいまだからこそ、僕は西浦教授に敬意を表しながら、批判的検証を行うのが健全だと思う。それも、本来は国でやってもらいたい」 「週刊新潮」2020年7月2日号 掲載

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