史上初の2年連続4連敗で敗れた巨人。セ全体のレベルアップが必要だ!【伊原春樹の野球の真髄】
ソフトバンクが史上初の2年連続4連勝で巨人を下して日本一となった今年の日本シリーズ。戦前、私は初戦のソフトバンク先発・千賀滉大と巨人先発・菅野智之の投げ合いで菅野が負けるようなことがあればソフトバンクの4連勝もあり得ると思っていたが、そのとおりになってしまった。やはり、ソフトバンク投手陣のレベルは高い。先発、リリーフのすべてが150キロ超の強いストレートに精度の高い変化球を持つ。強力な投手陣に巨人打線が対応できなかったことがすべてだ。 ソフトバンク投手陣のチーム防御率は2.92。12球団唯一の2点台だ。さらに奪三振も1035と、こちらも12球団唯一の4ケタ台となっている。それらの数字が示すとおり、ソフトバンク投手陣を打ち崩すのは簡単ではない。巨人打線より力のある西武打線や楽天打線でも、1、2点を取るのに四苦八苦している現実もある。第3戦(PayPayドーム)ではあわやノーヒットノーランの1安打完封を食らったが、それもむべなるかな、だ。 今季、セ・リーグはクライマックスシリーズ(CS)を導入しなかった。パ・リーグは1位・ソフトバンク、2位・ロッテの対戦のみを行ったが、やはりシリーズ直前に緊張感のある試合をこなしたソフトバンクと、公式戦の消化試合しかやらなかった巨人とでは差が出てきてしまうのは明らかだ。そのあたりが史上ワーストのシリーズ16安打、4試合制で最多の41三振、2005年阪神に並ぶ4試合制で最少の4得点に終わってしまった要因になるだろう。13年から8年連続でパが日本シリーズを制覇しているが、セが是が非でも日本一を取り返したいと考えているなら、コロナ禍で日程の問題があったかもしれないがCSは開催すべきだったと思う。 セがパに勝てない状況をひっくり返すためには、どうすればいいのか。よく言われるようにDH制を取り入れるのも一案だろう。やはり、セの場合、打線に投手がおり、さらに打力のない捕手が入っていれば2人の“安牌(あんぱい)”が生まれてしまう。それでは一番から九番まで息つく暇のない打線を相手にしているパの投手とは差がついてしまうのは仕方ない。厳しい状況の中で投げ続けるパの投手は自然とレベルアップを果たし、それに対抗するために打者は己の肉体、技術を磨いていく。パにはそういった好循環があるのは間違いない。 もちろん、それだけではない。選手のスカウティングや育成方法、練習内容、トレーニング環境など、セのすべての球団が真剣に考えていかなければパに追いつくことは叶わない。巨人1球団だけの問題ではない。セ全体でレベルアップを目指していかないと、パの牙城は簡単に崩せないだろう。
週刊ベースボール