Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

50年前のテクノスリラー小説を甦らせた遺族公認の続篇が登場

配信

Book Bang

 三月以降、相次いだパンデミック(感染爆発)小説の刊行。誰しもコロナ禍の影響と思ったに違いないが、実はこのジャンルはコロナ以前から人気があり、作品も定期的に出ている。その人気に先鞭をつけたのが、マイクル・クライトン(二〇〇八年没)の『アンドロメダ病原体』だ。  パンデミックものというと、アフリカや中国で発生した謎のウィルスが世界中に蔓延していくというのが定番だが、この作品の特徴は病原体が宇宙由来であること。人工衛星が地球外で回収した微粒子が人類に感染、やがてアメリカの田舎町を壊滅させ、科学者たちの戦いが始まる。  本書は五〇年前に刊行されたその傑作の続篇に当たる。南米アマゾンの密林に突如巨大なブロック状の特異体が出現、そこからアンドロメダ因子が検出される。半世紀前の事件以来、〈永遠の不寝番〉計画に基づき因子の再出現を監視していたアメリカ政府は、直ちに前回の調査に関与したジェレミー・ストーン博士の息子、ロボット工学者のジェイムズ・ストーンを始め、科学者を中心とするチームを現地に派遣するが……。  前作の特徴は報告書等を交えたノンフィクションタッチにあったが、今回クライトンを継いだウィルソンもその手法を活かし、まずはスリリングな秘境冒険小説の妙をたっぷり味わわせてくれる。専門用語が頻出する出だしはいかにもSF調だが、ミステリーやホラー趣向も自在に取り込むのが「テクノスリラーの巨匠」たるクライトン流。銃器活劇にも偏らず、特異体の謎や黒幕の陰謀等で読者の興を引くのに加え、ジェイムズ・ストーンと現地の少年との交流を通じて疑似親子劇を盛ってみせるなど読みどころは尽きない。  地底から宇宙へと躍動する終盤の演出もまた見事だ。クライトン家がまだネタを抱えているのなら、今後もウィルソンに書き継いで貰いたいが、コロナ禍のような現実との符合はちょっと怖すぎるかも。 [レビュアー]香山二三郎(コラムニスト) かやま・ふみろう 新潮社 週刊新潮 2020年6月25日早苗月増大号 掲載

新潮社

【関連記事】