幾田りら「苦しい片思いの経験が活きている」 10代の恋と青春、活動の原動力を語る
現役高校生たちの青春を追いかける恋愛番組『今日、好きになりました。』(以下、『今日好き』)の新シーズン『今日好き 蜜柑編』が17日より放送を開始した。主題歌を務めるのはYOASOBIのボーカル、ikuraとしても活動するシンガーソングライターの幾田りら。2021年の『今日好き 向日葵編』から「ロマンスの約束」が主題歌として起用され番組を彩ってきたが、今回は書き下ろし楽曲である「スパークル」が新たに決定。10代の恋や青春が詰まった『今日好き』を観て、彼女はどのように感じ、曲にしたのだろうか。「スパークル」に込めた思いや自身の青春時代など、話を聞いた。 【撮り下ろし写真】幾田りら ーー『今日好き 蜜柑編』ではスタジオメンバーとして高校生の恋愛を見守られるとのことですが、ご覧になっていかがでしたか? 幾田りら(以下、幾田):いままではスマホで画面越しにひとりで観ていたので、今回スタジオで井上(NON STYLE)さんやかすさんと一緒に観るのはまた違って新鮮でした。みなさんここでキュンキュンするんだとか、ここで驚くのはわたしだけじゃないんだとか、周りの方の反応を知りながら恋模様を観るのはより楽しく感じましたね。 ーー2021年の『今日好き 向日葵編』から主題歌を務めていますが、初めて「ロマンスの約束」が番組のなかで流れたときはどんな心境だったのでしょう。 幾田:最初は馴れなくて、流れるたびにドキッとしていました。回を重ねるごとに、SNSでも「この曲が流れると今日好きを思い出す」と言ってもらえることも増えて、わたしのなかでもみんなのなかでも浸透していったことを実感しました。 ーー今回の『今日好き 蜜柑編』の主題歌「スパークル」は書き下ろし楽曲です。どのような想いを込めましたか? 幾田りら 幾田:『今日好き』シリーズはカップル成立がゴールなので、両思いの素晴らしさや美しさはもちろん描かれていると思いますが、そこまでの道のりには必ずいろんな片思いが存在していて。恋破れたけど素敵な思いを持っていたメンバーの子たちの一途さが胸に響いたので、片思いをテーマに曲を書こうと決めました。 ーー幾田さんが思う片思いの素晴らしさとはどんなところでしょう。 幾田:片思いってとてもピュアで真っ直ぐな気持ちだなと思っていて。好きな相手に他の好きな人がいたり、自分のことが好きではなかったり……必ずしも叶う思いではないはずなのに確かに「その人のことが好き」という気持ちは自分のなかに存在して成立している。片思いは悲しくて切ないものに片付けられがちですが、『今日好き』を観て改めてその純粋さとパワーを感じましたし、自分自身も共感するところがありました。 ーー共感というと? 幾田:わたし自身も片思いに思い入れがあって。経験してきた片思いはいまの自分をつくっているもので人生の肥やしになっていると思うんです。「スパークル」では過去の自分に対して「あのときあの人に恋をして、あなたは幸せだったでしょ?」と伝えている部分もあります。 ーー「スパークル」は片思いをする人たちを応援するというよりかはひとつの道をつくってあげているような温かさがありますね。 幾田:「スパークル」には自分の経験と重ねて、恋破れた子たちの片思いが報われるような曲にしたいという気持ちを込めました。片思いの痛みを知って、その痛みを乗り越えていくことで、その経験が今後の癒しになるはずだから。いまは辛くて悲しくても強くなっていってほしいなと。 ーー曲を作る際は何から作り始めるのでしょうか。 幾田:ケースバイケースですね。今回の「スパークル」に関してはメロディーから作りました。そこからこういうノリの曲にしたいとか、ギターはこういう風に鳴ってほしいなとかイメージが湧いてきて。ただ、曲のなかで歌詞が先にできた部分やメロディーと歌詞が同時にできた部分もあります。 歌詞から作る場合は、大枠のテーマを決めておいて、その後感じたことや思ったことを都度スマホのメモのなかに書き溜めておきます。予め自分の伝えたいことを文章に落とし込んでおくんです。そのメモがそのまま歌詞になることもあります。 ーー『今日好き』を観てご自身の10代のときの青春と重なるところはありましたか? 幾田:高校生のときのキラキラ感と怖いもの知らずで体当たりしていく感じは当時を思い出しました。わたしは小・中学校と「かけっこで誰にも負けたくない!」みたいな男勝りなタイプだったので、恋愛でも好きな子ができたらアタックするタイプでした。 ーーそうだったんですね!でも自分から積極的にアタックするのはかなりエネルギーがいると思いますが。 幾田:そうですね。でも当時は怖くなかったんだと思います。報われる恋だけじゃなかったんですが、恋していること自体が楽しいという感覚もあったんだと思います。 ーー当時そういった恋の気持ちを曲にすることもありましたか? 幾田:ありました。昔の曲はなかなか恥ずかしくて聴けないですけど……(笑)。 ーーいまと10代の頃は曲に込める気持ちも変わってきましたか? 幾田:昔のほうが気持ちをオブラートに包んで隠していたかもしれません。本名で活動していたので友達に聴かれてしまうのが恥ずかしくて。でも、いまは覚悟を決めて曝け出そうと思っています。 ーーなぜ「曝け出そう」と思えたのでしょうか。 幾田:シンガーソングライターとしてご飯を食べて行く、生きていく……それが夢だからこそ、自分を削ってでも曲を書かないといけないなと思っているので。曝け出すことは使命だと思っています。 ーー10代の恋の経験がいまの自分に活きているなと感じることはありますか? 幾田:10代のときの恋愛は、がむしゃらに人を好きになったりとか、愛してもらったりとか素敵な経験もたくさんありますが、すべてがいいことばかりではなくて。すごくショックを受けて「ああ、もう人を好きになりたくない」と感じたこともありました。ただ、その経験で傷ついたからこそ、強くなれていまの自分に繋がっていると思っています。これから新しい恋をして辛いことや苦しいことがあったとしても、10代のときの自分を思い出せば乗り越えられるんじゃないかなと。過去の自分はいまの恋愛を自由にしてくれています。 ーー恋の良い部分だけではなく、切なさや苦しさの経験も今の音楽活動や幾田さんご自身の強さに繋がっているのですね。 幾田:10代の経験は恋だけでなくすべてのことが今の自分をつくってくれています。家庭環境とか学校生活とか習い事や部活とか……。わたしは物心ついたときから歌手になりたいと思っていて、中学2年生で初めて路上ライブをして、そこからオーディションを受けたりライブハウスに出たりと音楽の道を進んできました。志してきた夢を諦めることなく、走り続けてきてくれた10代の自分にはすごく感謝してます。その過去があるから、いまの活動を簡単には諦められないし、自分には音楽が絶対に必要だと思わせてくれる。これまでの音楽に向き合ってきた濃密な時間が、今の活動の原動力になっているんです。 ーー10代の経験がいかに貴重かということが伝わってきました。幾田さんのように夢を追いかけている10代の方たちにむけて、今だからこそ伝えたいことはありますか? 幾田:自分がやりたいこと、好きなことがあるとしたらとりあえず果敢に挑んでみてほしいです。わたしも路上ライブやオーディションなど、自分が一歩踏み出したことが、いまの自分に繋がっています。自分の「これだ」と思うものがあれば、ぜひ一歩踏み出す勇気を持ってもらえたらなと思います。
神崎真由