「権利は使わなければ輝かない」ブラック企業から自分を守る手段
相談件数は増加の一途 1時間以上悩みを訴える人も
「プルルル、プルルル」。一つの相談の対応を終えて受話器を置くと、すぐさま次の電話がかかってくる。受付用の電話機は計18台。厚生労働省の委託事業「労働相談ほっとライン」(フリーダイヤル0120-811-610)を担う民間会社の一室だ。 「平日の昼間は仕事もあって、地元の労基署などにブラック企業被害の相談ができない」といった声に応え、2014年9月から「ほっとライン」はスタートした。若者労働者の「使い捨て」が疑われる企業への取り締まり強化の一環として、水曜を除いて平日は午後5時から午後10時まで、土曜と日曜は午前10時から午後5時まで対応している。 開設当初は1か月あたり1500件だった相談数が、半年後には2000件を超え、現在では2500~2600件に。予想以上の件数で電話がかかりにくくなったため、今年4月からは3回線増やして約20人体制で相談に応じている。 厚労省によると、1件当たりの相談時間は平均20分。職場の悩みや現状について1時間以上にわたり切々と訴えてくる事例も少なくない。主な内容は(1)解雇・雇止め(2)有給休暇の未取得(3)残業代の未払い――などという。 一方、全労連が各地での日常相談とは別に毎年1回、3月3日にフリーダイヤルで実施する「労働相談ホットライン」への件数も15年は279件だったのが今年は329件に。こちらは職場内のパワーハラスメントや長時間労働、有給休暇などに関する相談内容が上位を占める。 清水さんの訴訟を支援した首都圏青年ユニオンの山田真吾事務局長は、相談増加の背景について、非正規労働者の比率が4割に迫る勢いで増えていることに加え、「ブラック企業、ブラックバイトという名称が一般化し、自分の会社の勤務形態についても問題意識を持つ人が増えたためでは」と分析する。その上で、「相談数が増えたとしても、その先のハードルが高いのが現状」と言う。残業代や有給休暇などについて「うちの会社は法的に問題あり」「私たちには要求する権利がある」と確認ができたとしても、次の段階の会社側との交渉を個人レベルで行うとすれば、半ば自分の雇用との引き換えに近い状態になるからだ。