ほぼ日手帳、売上高の過半は海外 書き込みたくなる工夫 「ほぼ日手帳」(下)
「読み返す」という楽しみ広める
「読み返す」という楽しみを広めたのは、ほぼ日手帳の大手柄だ。文庫サイズは本棚に何年分もきれいに並べて置きやすい。記憶はうつろいやすいが、書き留めた走り書きからでも鮮やかによみがえる。人生の解像度が上がる。 東日本大震災が起きた後、ほぼ日は手帳を破損や紛失したユーザーに手帳とカバーを無償で贈った。その人それぞれの記憶や思いを、「手帳」という形で預かっているコンテンツ企業にふさわしい振る舞いだった。 スマートフォンに撮りためた写真も日々の記録に違いないが、手書きの文字や絵はもっとパーソナルなライフログだ。年月日でさかのぼりやすいのも手帳のよさ。だから、「スマホやデジタルカレンダーと併用する人が多い」(小泉氏)。「デジタルの時代に手帳は消える」というかつての見込みを「ほぼ日手帳」は軽やかに裏切ってみせた。 累計販売部数が1000万部を超えて、チームが着手したのは、ほぼ日手帳のスマートフォンアプリの開発だ。コンセプトはそのままに「デジタルの強みを生かしたい」(星野氏)と、アイデアを磨く。 余白と書き込みやすさを用意した手帳は、ユーザー自らの記録を通して、記憶に手足を生やした。「自分」という最強コンテンツの存在を、多くの人に気づかせた。ほぼ日手帳を読み返したくなる理由はバックナンバー付きの「ほぼ日刊ジブン新聞」だからだろう。