ANAと豊田自動織機、手荷物コンテナに自動搭載 ロボットが判別、佐賀空港で検証
全日本空輸(ANA/NH)と豊田自動織機(6201)は12月16日、佐賀空港で展開している手荷物運用の実証実験を報道関係者に公開した。両社で共同開発した、手荷物の自動積み込みロボットと運転者が乗車しない自動運転のトーイングトラクターを組み合わせたもので、貨物の搭降載などを担うグランドハンドリング(グラハン、地上支援)の人材が少子高齢化などで全国的に不足する中、省力化に向けた検証を進めている。 ◆スーツケースの大きさ判別しコンテナへ 実証実験は佐賀空港の貨物上屋に設けた実験用の施設で進め、疑似貨物を使用する。手荷物積み込みロボットは、乗客が預けた手荷物を旅客機に積む貨物コンテナに自動で積み込む。新開発のロボットハンドと独自の積み付けロジックを採用することで、手荷物を積み込むまでの工程でこれまで最大の課題であった、コンテナへ自動で搭載できるようになる。航空機用貨物コンテナに手荷物を積み込むロボットは、国内初だという。 乗客が預ける手荷物の中でも割合が高いキャスター付きスーツケースに対応。ソフトとハード両タイプに対応し、縦向きと横向きどちらでも積めるようになっており、スーツケースの大きさを認識して効率が高く荷崩れが少ない搭載位置を割り出して、並び替えながら2つのコンテナに同時に積める。積付パターンと一致しないものの場合は上部にあるストックコンベアに仮置きした後に積み込む。 スーツケースは35キロ以下のものに対応し、1つあたり平均25秒で積み込む。グラハンの係員が積み込む場合、1つにつき30秒程度かかる。自動化により1つあたりおよそ5秒短縮することで、受託手荷物が多い場合でも出発準備にかかる時間も短くなり、定時運航につながるとしている。また、係員が手荷物に触れる機会が減るため新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの拡大防止にもつながり、衛生面での利点もあるという。 自動搭載できる荷物は、全体の8割程度を想定する。サーフボードなど大型の受託手荷物は、従来通り係員が積み込む。 ◆カメラで読み取りルート記憶 トーイングトラクターは、貨物コンテナを乗せた「ドーリー」と呼ばれる台車などを空港内で牽引(けんいん)する車両。今回の実証実験では、貨物上屋で貨物を積み込んだコンテナを、機内へ積み込むハイリフトローダーまでトーイングトラクターが自動走行する。ハイリフトローダー付近では手動に切り替え、係員が運転する。 車両の位置や速度などは、係員が持つモバイル端末に送られる。係員はモバイル端末を用いて車両を遠隔指示し、監視する。 自動運転のルートは、係員が一度運転して通った場所を車体下部のカメラが読み込むことで記憶する。貨物上屋から機体近くまでは一定の経路で進むため、自動化できるという。ハイリフトローダーは便ごとに位置が異なるため、係員の操作が必要となる。 両社は2019年3月から佐賀空港でトーイングトラクターの自動走行試験を進めてきたが、これまでは緊急時に対処するため運転者が乗車していたが、今回の実証実験では運転者が乗らずに自動走行させている。 ◆グラハン業務の省力化進める ANAは2019年3月に、佐賀県と連携して佐賀空港を新技術の実験場とする「イノベーションモデル空港」に位置づけた。少子高齢化や人手不足への対応策として、空港の制限エリア内を走る連絡バスの自動運転化に向けた実証実験など、グラハン業務の自動化や省力化をグループで進めている。 グラハンの個別の作業を自動化するだけではなく、手荷物の搭載については仕分場でのバルクカートへの積み込み、バルクカートを牽引するトーイングトラクターの自動運転など、旅客機への搭載までの作業を自動化することを目標に掲げ、グラハンの「Simple & Smart化」を目指している。 国土交通省航空局(JCAB)では、2025年までに完全自動運転となる「レベル4」の実現を目標に掲げている。ANAは今後、佐賀のようにトーイングトラクターで牽引する車両が少なく人手が不足する地方空港と、牽引車両が多く、走行距離も長い羽田のような基幹空港では分けて考え、自動運転の導入を検討していくという。
Yusuke KOHASE