「泊まれない奥座敷」和倉復興の道険しく 北陸随一の温泉地、営業再開は4軒のみ
宮西さんは「護岸工事もようやく始まる見通しとなり、光が差してきた。施設の建て直しとまちづくりの両輪で復興を目指したい」と話した。
■歴史・文化の再認識に復興の糸口
立命館大の山出美弥准教授(都市計画)
和倉温泉の復興には非常に長い時間がかかるだろう。それでも地域住民が主体となって、地域の歴史や文化、なりわいを再認識することで復興の糸口は必ず見つかる。
大正14年に兵庫県北部を震源に起きた北但大震災では計420人が死亡し、旧城崎町(現豊岡市)の城崎温泉街も甚大な被害を受けた。このとき、住民らは「温泉が湧き出る限り、城崎は大丈夫だ」という強い意志のもとで一丸となり、復興に尽力したと聞く。
住民らは地域の再建に向け、100回以上も集まって話し合ったそうだ。復興債の返済には25年近くかかったが、復興自体は10年で成し遂げられた。復興のキーポイントは、地域をどう再建し、コミュニティーを維持していくかを住民主導で考えることだ。
地域の魅力を発信していくことも忘れてはならない。特に若者は「被災した温泉街の復興を応援したいから行く」というよりも、「おいしいもの、かわいいものがあるから行く」という意識が強い。若年層に訴求できるよう、交流サイト(SNS)も駆使すべきだ。(小川恵理子)
■被災6市町の宿泊再開なお5割
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県の6市町にある宿泊施設のうち、客の受け入れを再開できたのは5割弱にとどまる。各施設とも地震の被害が大きく、再開できた施設の多くもボランティアや復興支援業者などに限定して受け入れている状況だ。
県によると、地震の被害の大きかった輪島、珠洲(すず)、七尾3市と能登、穴水、志賀3町にあるホテルや旅館、民宿など300余りの施設のうち、11月下旬までに再開できたのは150施設ほど。再開できても設備が壊れたままといった施設が多く、「まだ通常の宿泊客を迎え入れられる状況ではない」(県観光戦略課)のが実情だ。