「月販目標台数の○倍受注」の発表はあれど……どこにいる? 売れてるとといわれる車種を街なかで見かけないワケ
話題の新車をあまり街で見かけない理由
クルマの売れ行きは、小型/普通車は日本自動車販売協会連合会が集計する登録台数、軽自動車は全国軽自動車協会連合会による届け出台数で示される。 【画像】2024年上半期の新車販売台数ランキングでトップのクルマの画像を見る しかしメーカーが登録台数や届け出台数を発表するのは、年間を通じて国内販売の1位、あるいはカテゴリー別の集計で1位になったときなどに限られる。台数に関する公表でもっとも多いのは、発売から1カ月後の受注台数だ。「発売後1カ月で2万台を受注」という具合に公表される。 ただし、いくら受注台数が多くても、順調に納車できなかったら意味はない。むしろクルマを購入したユーザーを待たせていることになり、顧客満足度はマイナスになってしまう。従って売れ行きが好調だと誇りたいなら、登録台数や届け出台数を公表すべきだが、実際はそうなっていない。登録台数や届け出台数を増やすには、メーカーの生産規模に余裕を持たせる必要があるからだ。このような事情があるため、販売が好調なことを手っ取り早くアピールできる受注台数を公表する。 受注が好調でも生産と納車が進まない車種は、人気車だと話題になる割に、街なかで見かける機会は少ない。一般的に新型車を頻繁に見かけるようになるには、納車が順調に進んでも、1年前後を要する。1カ月平均の登録/届け出台数が5000台で、1年間を経過すれば累計6万台といった販売実績が必要だ。 たとえばホンダは、2024年4月に「WR-Vが発売後1カ月で約1万3000台を受注」と発表したが、2024年11月時点で頻繁に見かけるほどではない。マツダでは2022年9月に「CX-60が予約受注開始から約2カ月半で、月販計画の4倍を超える8726台を受注」と発表した。しかしその後に売れ行きが下がり、街なかではあまり見かけない。 日産は2023年7月に「サクラが発売開始から約1年間で5万台を受注」と公表した。これも街なかではあまり見かけないが、軽自動車サイズの電気自動車だから、地域ごとに走っている台数が異なる。一戸建ての多い世帯のセカンドカーとしては積極的に使われているのが実情だ。 以上のようにメーカーが受注台数を誇らしげに公表しても、その後の売れ行きが伸び悩んだりして、街なかで見かけない車種は意外に多い。
渡辺陽一郎