38歳で双極性障害1型になった男性 そう状態になるとバーやクラブで散財 8回休職しても定年退職できたワケ
産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
精神科産業医として45年以上のキャリアを持つ夏目誠さんが、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい七つのこと
心の病気と長期間付き合い、再発を繰り返すと様々なつらい状況が生じます。収入減少や仕事への不安、夫婦・家族関係の変化……。離婚も少なくありません。「適応障害」や「うつ病」は患者数も多くなじみがあると思いますが、双極性障害(そううつ病)はどうでしょうか。気分が極端に高揚する「そう」と落ち込む「うつ」を繰り返し日常に支障をきたします。そう状態では、異常におしゃべりになったり、怒りっぽくなったりするほか、浪費をする人も。退社や離婚に至った多くの人たちと接してきましたが、精神科産業医48年の経験の中で、定年まで無事に勤めあげた人を2人知っています。何が良かったのか、その1人の例を紹介します。
最初はうつ病、その後は双極性1型
公的機関総務部の須崎太郎さん(仮名)は38歳の時に、眠れなくなり、うつ病と診断されて5か月間休職。復帰して1年ほど働いて調子が崩れ、今度は双極性障害1型と診断されました。1型とは症状が日常生活に支障をきたすレベルで、2型はそれよりも軽い症状です。5か月休職し復帰しましたが、再発し、4か月休職して、また復帰する際の産業医面談で須崎さんと出会ってからのお付き合いです。妻の絵里さん同伴でした。
そう状態での飲食や買い物で借金300万円
産業医 : 精神科産業医の夏目です、よろしく。3回目の休職からの復帰。今は41歳ですね。 須崎さん: そうです。双極性障害1型と診断され、治療を受けています。 絵里さん: 再発を繰り返しているので、サポート法などを教えていただきたくて一緒に来ました。 産業医 : 症状は軽快していますか? 須崎さん: そう状態で多弁や多動に抑制が利かなかったのですが、かなり抑えられていると思います。 産業医 : いろいろ大変でしたか。 絵里さん: そうですね。気持ちが大きくなって、クレジットカードを使ったり、サラ金からもお金を借りたりしてバーやクラブで散財。ゲームソフトや高級なゴルフクラブを買って借金が300万円になりました。親族会議を開いて、義父が借金を返済してくれました。うちは子どもが2人いて、お金がかかりますから。 産業医 : 大変でしたね。仕事の方はどうでしたか。