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『パヴァロッティ』で3本目…ロン・ハワード監督の音楽ドキュメンタリーへの緻密なアプローチ

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MOVIE WALKER PRESS

神の声を持つと称されるイタリアのオペラ歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ。2007年にその生涯に幕を下ろしてからも、世界中でその歌声が愛され続ける彼の人生や魅力に迫るドキュメンタリー『パヴァロッティ 太陽のテノール』が現在公開中だ。監督を務めたのは、『アポロ13』(95)やオスカー受賞作『ビューティフル・マインド』(01)で知られる巨匠ロン・ハワード。音楽ドキュメンタリーを手掛けるのは、今回で3本目となるハワードのアプローチを軸に、本作の見どころを紹介していきたい。 【写真を見る】神の声を持つと称されるイタリアのオペラ歌手、ルチアーノ・パヴァロッティ アルバム売上総数1億枚、観客動員数1千万人越えという記録を残し、“ハイC”と呼ばれる高音の音域を軽々と、かつ優美に操る歌声を武器に、多くの人々の耳と心を虜にしたパヴァロッティ。本作はそんな彼がオペラ歌手として注目を集め、頂点へと駆け上がっていく姿、最愛の家族への思い、慈善活動への献身が映しだされている。 米アカデミー賞の常連として確かな存在感を確立するハワードは、『ダ・ヴィンチ・コード』(06)などのラングドンシリーズや『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)といったエンタメ大作でもその手腕を発揮してきた。一方で、『パヴァロッティ ~』のほかにも、世界的ラッパーのジェイ・Zが故郷フィラデルフィアで主催する音楽フェスティバルを追った『メイド・イン・アメリカ』(15)や、ザ・ビートルズの曲の変遷や人気の秘密に迫った『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』(16)など音楽ドキュメンタリーの制作もライフワークとしており、そのジャンルもラップにロック、本作のオペラなど多岐にわたる。 近年になってドキュメンタリーを撮り始めたハワードだが、先述の『アポロ13』や『ビューティフル・マインド』、『フロスト×ニクソン』(08)に『ラッシュ プライドと友情』(13)といった作品を見ればわかるように、そのキャリアを通して実話や実在の人物を描いてきた。 本作でも、パヴァロッティが過去に出演したテレビ番組やインタビュー映像、ニュース雑誌を徹底的に調べることから着手。そして、彼の妻や子ども、教え子たち、共演経験のあるアーティスト、マネージャー、プロモーターにいたるまで、かかわりのある人物へのインタビューを敢行し、その規模はニューヨークにロサンゼルス、モントリオール、ロンドン、イタリアのモデナなど、世界各地にわたる。さらに、これまで日の目を浴びてこなかったパヴァロッティのありのまま姿が収められた個人的な映像が、家族や友人たちから提供されたことで、希代のエンターテイナーの内面やバックグラウンドに強く惹かれていったという。 これらの映像を駆使し、ハワードは映画全編の構造を三幕のオペラとして捉え、“パヴァロッティの人生とは何だったのか?”という疑問をテーマに作品を構成することに。パヴァロッティの幼少期から最初の妻との結婚、初の大舞台への出演に、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴと結成した“三大テノール”の圧巻のステージなどが次々と登場。慈善活動に生き甲斐を見いだすきっかけとなるダイアナ妃との出会い、主催したチャリティーコンサートで交流が生まれたロックバンド、U2のボノとの友情なども描かれ、パヴァロッティがオペラ歌手という枠に収まらない豊かな人間性を持っていることを観客に届けようとしている。 周囲からのプレッシャーや、ジャンルを飛び越えた活動に対する、バッシングを受けることもあったなか、なぜ、パヴァロッティは太陽のような歌声と笑顔で人々を照らし続けることができたのか?本作を通してその理由に近づき、飾らない姿に人生をより楽しむヒントがもらえるはず。 文/平尾嘉浩(トライワークス)

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