私があと20歳若かったら…ソフトバンクに勝つ!/廣岡達朗コラム
野球は理論でするのではない
「アマチュアとプロが野球をやっているみたいでしたね」と、ある人から言われた。そのとおりだ。今年の日本シリーズもソフトバンクの4連勝で終わった。 第4戦の巨人の起用法を見ていたら、途中から誰でもいいから、とにかく使えばいいという感じだった。チームの中で誰が信頼できるのか、まるで伝わってこない。われわれの世界では、どんなに正しいことをやっていても勝ち負けがつくのは当たり前だが、それにしても理にかなっていない。人の道を知らないのだ。 具体的な問題点は、誰が柱なのかはっきりしないところである。 坂本勇人はキャプテンなのに、リーダーの資質が感じられない。彼ほどの選手になればナインを叱咤して当然だが、そういう必死さ、泥臭さが見えなかった。自分のプレーをアピールしているだけだ。 四番にしてもチーム内外ににらみをきかせられる存在が打つべきだと、私はずっと言ってきた。岡本和真は確かに才能があるが、まだ早い。 われわれが巨人でお世話になった頃は、先輩からやかましく言われた。川上哲治さんが親分で、千葉茂さんがその次。ナインの中にはきちんとした序列があった。川上さんは苦労して上に行き責任観念があったから、若手にこうしろああしろと言えた。 結局、柱のいないチームは弱いということが今回の日本シリーズを通して露呈してしまった。 2年連続で4連敗したら本当なら原辰徳監督は辞めるべきだ。百歩譲ってコーチの中から「私の責任だ」という人間が一人も出てこないのが情けない。結局、指導者も選手も含めて責任の所在がどこにもないのだ。 一方、ソフトバンクは投手のスピードが注目されているが、なぜ速いかといえば、右投手なら体の軸が一塁側に流れずに投げているからだ。アメリカの投手のマネをしていない。投手出身の工藤公康監督が口を酸っぱく言っているのだろう。 ソフトバンクと似たチームを相手にすればソフトバンクも苦戦する。私の頭脳がいまのように冴えていて、あと20歳若かったら、ソフトバンクに勝つ。勝たせるための言い方も心得ている。人間は正しいことをやり続ければ、早い遅いの違いはあるが必ずものになるという信念こそが大切だ、と。もう一つ、野球は理論でするのではない。理論は知っておく必要はあるが、その理論を体に覚えさせるために練習がある。さらに、ユーティリティープレーヤーを極力作らないことも大切。一芸に秀でた選手ではなく三拍子そろってこそ人間らしいプロの選手になれるのだ。