コーヒーは1日4杯まで。適量を守れば老化を防ぐ可能性も?【医師・山田悠史】
超高齢社会を生きる私たちが望むのは、ただ長生きするのではなく、“死ぬまで元気”でいること。なるべく人の手を借りず、最期まで自立した生活を送りたい。そのために、今すぐできることは何か。NY在住の老年医学専門医、山田悠史先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(6月24日発売)から、その答えをひとつご紹介します。
死亡リスクを下げるという報告もある
コーヒーは体によいのでしょうか、それとも悪いのでしょうか。 コーヒーが体によいとする根拠には、まずいくつかの病気のリスク減少との関連性が挙げられると思います。 その「いくつかの病気」とは、パーキンソン病(参考文献1)、アルツハイマー病(参考文献2)、2型糖尿病(参考文献3)などが挙げられます。ただ、仮にこれらの病気のリスクを減らす効果があるとして、実際問題なぜこれらの病気を減らすのかといったことは、まだ何もわかっていません。 また、死亡リスク減少との関連も報告されています。例えば、17の研究をまとめたメタ分析という手法を用いた論文では、1日3~4杯のコーヒーが16%の死亡リスク減少と関連していたと報告しています(参考文献4)。 このように、コーヒーには健康につながる役割があるのかもしれません。ただし、因果関係まではわかっておらず、コーヒーを飲むことで本当にこれらの病気を減らせるかまではまだわかっていません。
カフェインの摂取で頭痛や不眠が生じることも
一方で、コーヒーによる「副作用」にはどんなものがあるのでしょうか。 例えば、カフェイン摂取による短期的な副作用として頭痛や不安、手のふるえ、動悸、不眠などがよく知られています(参考文献5)。また、長期的な副作用として、不安障害との関連性を示唆する報告もありますが、因果関係まではわかっていません。 また、頻尿の症状とも関連する(参考文献6)ため、例えば男性で前立腺肥大があるケースでは、その症状を悪化させる可能性があります。私自身、過去に前立腺肥大の薬を内服中の患者さんで、実は日常的に飲んでいるコーヒーが原因だったというケースに何度か出会っており、意外な落とし穴かもしれません。 加えて、焙煎したコーヒー豆にはアクリルアミドと呼ばれる動物に発がん性を持つ物質が含まれるため、コーヒーの発がん作用を懸念する意見もあります。ただ、これまでがんの発症とコーヒー摂取の関連性を調べた研究では、がん発症との関連性は認められておらず、人間への発がんリスクの可能性は低いと結論づけられています(参考文献7)。 一般にカフェインの安全な摂取量は1日400mgまでとされており(参考文献8)、これは一般的なコーヒーカップで3~4杯程度にあたります。これを超えた場合に、先ほど紹介した副作用のリスクが増加します。また、まれな副作用として心臓の不整脈の可能性なども指摘されています。 以上のことから、コーヒーを飲まない方がよいという理由も、コーヒーを飲んだ方がよいという強い理由もないというのが現状です。しかし、どちらかといえば健康につながる可能性を多く指摘されているので、「副作用」の出ない範囲で適量を楽しむことには問題がないといえるでしょう。 この先、健康で自立した老後を迎えるために、山田先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』もぜひチェックを。 参考文献 1 Hernán MA, Takkouche B, Caamaño-Isorna F, Gestal-Otero JJ. A meta-analysis of coffee drinking, cigarette smoking, and the risk of Parkinson’s disease. Ann Neurol 2002; 52: 276–84. 2 Barranco Quintana JL, Allam MF, Del Castillo AS, Navajas RFC. Alzheimer’s disease and coffee: a quantitative review. Neurol Res 2007; 29: 91–5. 3 Huxley R, Lee CMY, Barzi F, et al. Coffee, decaffeinated coffee, and tea consumption in relation to incident type 2 diabetes mellitus: a systematic review with meta-analysis. Arch Intern Med 2009; 169: 2053–63. 4 Poole R, Kennedy OJ, Roderick P, Fallowfield JA, Hayes PC, Parkes J. Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes. BMJ 2017; 359: j5024. 5 Gunja N, Brown JA. Energy drinks: health risks and toxicity. Med J Aust 2012; 196: 46–9. 6 Bird ET, Parker BD, Kim HS, Coffield KS. Caffeine ingestion and lower urinary tract symptoms in healthy volunteers. Neurourol Urodyn 2005; 24: 611–5. 7 Bøhn SK, Blomhoff R, Paur I. Coffee and cancer risk, epidemiological evidence, and molecular mechanisms. Mol Nutr Food Res 2014; 58: 915–30. 8 Heckman MA, Weil J, de Mejia EG. Caffeine (1, 3, 7-trimethylxanthine) in foods: a comprehensive review on consumption, functionality, safety, and regulatory matters. J Food Sci 2010; 75. DOI:10.1111/J.1750-3841.2010.01561.X. 構成/中川明紀 写真/shutterstock
山田 悠史