ベンゲルは過去10年でサッカーの 何が最も進展したと考えているのか
【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】アーセン・ベンゲルに聞く(4)その(1)、その(2)、その(3)はこちら>> 【画像】名古屋グランパスを率いたアーセン・ベンゲル いまベンゲルは、コロナ禍による移動制限がないときには、ロンドンとパリとチューリヒを行き来している。チューリヒにはFIFAの本部があり、ベンゲルはそこで「グローバル・フットボール発展プロジェクト」の責任者を務めている。フットボールの優れたコーチングを世界に広める仕事だ。アフリカなどでは多くの子どもたちが、指導者のいないままプレーしている。ベンゲルが育ったアルザス地方の村ダットレンハイムでも同じだった。 アドレナリンが湧き出るビッグゲームを何十年も続けた後では、簡単には普通の暮らしに戻れないものだろうか。 「そうだね。日々の暮らしの退屈な部分は、誰にとっても退屈だ。あの週末の緊張感がなくなったのは寂しい。私の人生は芝生の上にあったんだ」 今もベンゲルは朝5時半に起き、夜のゲームの予定をチェックしてから、ジムで1時間半にわたって体を動かすことを日課にしている。最近では友人たちと共に過ごす時間も増えたし、ひとり娘のレアとの時間も増えた。彼女はケンブリッジ大学で神経科学の博士号を取得したところだ。 映画を見たり、本を読んだりする時間もできた。「もうじき(ユヴァル・ノア・ハラリの)『サピエンス全史』を読み終える。本よりは(新聞や雑誌の)記事を読むほうが多い。マネージメントやモチベーション、チームスピリットなどに関するものをよく読む」。ベンゲルはビジネスマンを対象に、マネージメントについて話すこともある。 そして彼は、生涯に及ぶフットボールの勉強を今も続けている。 「過去10年間で最も進展があったのは、フィジカルの部分だ」と、ベンゲルは言う。 「選手のフィジカルなパフォーマンスを誰もが簡単に測れるようになってからは、その数値が低い選手は出番がなくなった」 それは寂しいことではないのか。ベンゲルが2013年に獲得したメスト・エジルのような才能ある選手も、今のプレスの激しいゲームスタイルに対応できないという理由で使われなくなった。