【BS松竹東急・8月放送分】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! ―大スターや 巨匠監督の映画に 注目!
今月は大スターや巨匠監督の映画に注目。劇場版第一作から今年で55年を迎える、映画シリーズ「男はつらいよ」。その主演の渥美清は、昭和を代表する喜劇俳優だった。「男はつらいよ」以降は〝寅さん〞のイメージと一体化したが、今回はそれ以前の彼の代表作を放送。野村芳太郎監督による「拝啓天皇陛下様」(63)は、孤児で無学な主人公が軍隊に入って、仲間もいればただで食事にもありつける軍隊を天国だと思い、戦争が終わりそうになると、除隊は嫌だと天皇陛下に直訴の手紙を書く喜劇。軍隊を礼賛するように見えて、根は孤独な男の哀歓を滲ませながら、戦争と人間を映し出した作品である。渥美は上官のいびりも何のその。本来過酷な軍隊生活をエンジョイする主人公に扮し、この逆説的な反戦映画を見応えのあるものにしている。好評を受けて作られた姉妹編「続・拝啓天皇陛下様」(64)、「拝啓総理大臣様」(64)も併せて放送。また渥美の主演作では、瀬川昌治監督とのコンビで彼が鉄道員を演じたコメディ「喜劇・列車」シリーズ3作品(67~68)、「男はつらいよ」の第6作(71)と、第30作(82)も登場する。
その第30作「男はつらいよ・花も嵐も寅次郎」に出演した沢田研二は、1960年代のザ・タイガースのボーカルを経て、71 年にソロ歌手デビューしてからは、〝ジュリー〞の愛称で70~80年代を駆け抜けたスーパースターだった。今回は彼が単独で初主演した「炎の肖像」(74)が登場。ここで彼はロック歌手の鈴木二郎を演じているが、後半の沢田のロックコンサートのシーンを含めて、虚実を融合させた異色作になっている。〝虚〞のドラマ部分では、公開当時話題になった大胆なラブシーンをはじめ、ロック歌手のスキャンダラスなプライベートをドラマとして描き、秋吉久美子や原田美枝子が彩りを添える。藤田敏八、加藤彰の日活ロマンポルノ監督コンビが演出にあたり、音楽は井上堯之と大野克夫という豪華な布陣。時代のカリスマだった、〝ジュリー〞の魅力が詰まった一本になっている。併せて、彼がストイックで妖しいテロリストを演じた森田芳光監督の「ときめきに死す」(84)。さらに急逝した志村けんの代役として主演した、山田洋次監督による映画への愛が込められた人間ドラマ「キネマの神様」(21)も放送される。