“電車”から着想した「家で作る軍艦巻き」 コロナ禍で3割増の「手巻きずし用のり」に続くか
新型コロナウイルスの影響で、家族で家にいる時間が増え、手軽なパーティーメニューが食卓に登場する機会が増えている。その一つが手巻きずしだ。 【軍艦巻き用のり開発のきっかけになった「回転寿司トレイン」】 のりを主力とする食品メーカー、ニコニコのり(大阪市)の商品にも、その効果は表れている。2020年4~7月の手巻きずし用のり商品の売り上げは、前年同期比30.2%増。料理に使うトッピング用ののりも大きく伸びた。 そんなトレンドを見据えて、同社初の試みとして10月に発売したのが「軍艦巻き」用の焼きのりだ。あらかじめ細くカットしてあるのりで、酢飯に巻いて具材をのせるだけで、好みの軍艦巻きを作れる。「のりで食のシーンを広げる」ことに挑んでいる同社に、コロナ禍での商品戦略を聞いた。
まとめ買いや料理の需要が拡大、販売1割増
ニコニコのりの主力である家庭用のり商品は、コロナ禍で販売を伸ばした。4~7月、業界全体の家庭用のりの販売規模は前年同期比1割増。ニコニコのりでも11%増となった。 特に好調だったのが、家での食卓や料理に使われる商品。手巻きずし用に加えて、卓上タイプの味付けのりは26.9%増。まとめ買いやスナック替わりに食べる需要が拡大した。また、パスタや丼にかける味もみのりは約2.4倍、きざみのりは19.5%増、お好み焼きなどのトッピングで使う青のり・あおさは13.2%増とそれぞれ伸長。料理の頻度が増えたことで需要が広がった。 一方、仕事や行楽、イベントなどにお弁当を持っていく機会が減ったことから、おにぎり用ののりは低調。前年を下回った。それでも、全体を見れば、在宅需要を取り込んで好調だといえる。 売り上げが堅調な中で、これまでにない商品として発売したのが、軍艦巻き用ののりだという。同社商品開発部 商品開発課課長の志智久氏はこの商品について「急きょ、商品を企画して発売した」と話す。なぜ、既存商品が好調な中で初めての挑戦に踏み切ったのか。
「家庭で軍艦巻き」に行き着いたヒント
これまで軍艦巻き用ののりがなかったことについて、志氏は「家庭で軍艦巻きは作らない、という決め付けから商品化していなかった」と説明する。これまで想定していなかった需要を見いだすことができたのは、あるきっかけがあったからだ。 新型コロナの感染拡大後、家庭用商品の販売は好調だったが、特に子どもの在宅時間が増えたことに対して「何か貢献できる商品を提供できないか」と考えていたという。子どもにとっては、家で家族と料理をしたり食事をしたりする機会は増えたものの、夏休みの旅行やピクニックなど、お弁当を持って出掛ける楽しみは失われてしまった。 模索する中で見つけたのが、家電などの企画・開発を手掛けるライソン(大阪府東大阪市)の商品「回転寿司トレイン」だ。レールの上に電車を走らせ、その上にお皿を載せて回転ずしを楽しめる玩具で、ステイホームが呼び掛けられる中で話題になっていた。 このおもちゃによって「軍艦巻き」に行き着いたという。「手巻きずしと比べて、軍艦巻きは家ではあまり作らない。だが、回転ずし店では子どもに人気があるメニューだ。家でも意外と簡単に作れるし、子どもの好きな具材を載せられる」と志氏は説明する。 すぐに「回転寿司トレイン」とのコラボレーションを持ち掛け、専用ののり「軍艦巻き用焼のり 7切20枚」を開発。急きょ、秋の新商品に加えた。通常、秋の新商品は9月1日に発売するため、春先に内容を決定する。今回の軍艦巻き用のりについては、7月に商品化を決定し、10月1日に発売にこぎつけた。 商品は、軍艦巻き用に板のりを7切サイズにカット。子どもも作りやすく、食べやすいように小さめのサイズにした。パッケージはニコニコのりの他の商品と大きく異なる。「回転寿司トレイン」で遊ぶ家族のイラストを前面に打ち出し、楽しさが感じられるデザインにした。 志氏は「のりの商品は、味や切り方などの種類が出尽くしたと思われがちだが、まだまだ新しいことができる。今回の商品では『軍艦巻きも家でできる』という提案を広めていくことで、のりの食シーンを増やしたい」と話す。