「民主主義には複数の政党と派閥が不可欠」どん底時代の元トップ谷垣禎一が語る自民党再生への道
谷垣 きつかった。私は比較的、他の選挙では楽に通ったんですけど、このときばかりは非常にきつかったですよね。こういうときは、もう一回、国民の信頼を取り戻すにはどうしたらいいかという原点に返らなければならない。 今も自民党内ではいろいろな議論がされている。過去もそういう議論はしてきたし、そこで分析したことが全部、適切だったかどうかはわかりません。ただ、だんだん時がたってくると、その反省を忘れるところが若干ありゃしないか。今度も議論されたようですが、しっかりその精神を守っていくことが、基本としては必要なんじゃないかなと思うんですね。 そのときには、自分のやってきたことの繰り返しを言ってもいけませんが、「国民の声を聞く」ってことが大事じゃないかと思うんです。 ● 右もあれば左もある 自民党の「派閥」の多様性 谷垣 一方で、現在、世間で議論されてることに多少不安感を覚えることもあるのです。例えば「派閥」。悪いところもたくさんあるかもしれないけど、いいところも私はあると思うのです。 大島さんは三木・松村派、その後を継いだ河本敏夫先生の下で大成されたでしょ。こう言うと失礼ですが、(番町政策研究所は)決して大きな派閥ではなかった。 だけど、存在意義がなかったかといえば、決してそうではない。やはり、それぞれの派閥にそれぞれの原点みたいなものがある。
岸田文雄首相が率いた宏池会と、安倍晋三さんが会長を務められた清和政策研究会では、原点からしてかなり違ったのは事実です。要するに(政治には)そういう原点みたいなものが、時々必要になる。俺たちの初心は何だったのかと。そういうものが。 たくさんの党がまとまってできた自民党だから、ある意味、それが多様性の良さにつながることもあるし、逆にバラバラの原因にもなる。しなくてもいい対立をする原点にもなる。派閥論というのは、なかなか難しいところがあります。 大小さまざまな派閥がありますが、それぞれの原点は変わったとは思いません。そういうところの良さが、時々「キラッ」と出ることもあると、私は思うんですね。 ● たとえ主流を外れたとしても 自分の派閥の原点は譲れない ――派閥同士で競い合い、自民内で疑似政権交代を果たしていくという効果もあるでしょう。各派が切磋琢磨する、その総体が自民党であるともいえるでしょう。各議員の教育を担う面もあるのではないですか。 谷垣 そこはあると思います。弊害はなくしていかなければなりませんが、いい面は残してほしい。相当、矛盾したことを言っているとは思います。 こう言うと共産党の人は怒るかもしれません。「派閥対立をなくせ」などと言い、共産党的な政党になればうまくできるかもしれませんが、そうなっちゃ自民党はつまらん。こう思うんですね。