「思いやり駐車場」 、約9割の人が「よく知らない」という残念現実! すごく便利なのになぜか
地域によって異なる利用証の申請方法
パーキング・パーミット制度を利用するには、利用証の発行が必要だが、全国一律の制度ではなく、各地方公共団体によって申請方法や有効期限が異なる。そのため、自分が住んでいる地域の制度内容をあらかじめ確認することが重要だ。 確認後、定められた要件を満たしていれば、申請窓口にて申請書や身分証明書、母子手帳などの必要書類を提出すれば、利用証が発行される。 例えば、最初に導入した佐賀県では、「佐賀県パーキング・パーミット制度(身体障がい者駐車場利用証)」という名称で、申請窓口は県庁の社会福祉課や各市町の福祉課などだ。 妊産婦に発行される利用証はオレンジ色で、有効期限は原則1年未満で、特別な理由がない限り更新できない。交付要件は、妊娠7か月から産後3か月で歩行が困難な人が対象となり、多胎児の場合は妊娠6か月から産後18か月で歩行が困難な人に適用される。 筆者の出身地である山梨県では、「やまなし思いやりパーキング制度」という名称で、申請窓口は県内各市町村の福祉担当課や県福祉事務所だ。 妊産婦にはオレンジ色の短期利用証が発行され、母子健康手帳交付日から出産後1年6か月まで、多胎児の場合は出産後3年まで有効だが、いずれも「乳幼児が同伴の時に限る」という制限がある。 地域ごとにルールは異なるが、該当者は申請をすることで、日常生活での負担を軽減できる可能性がある。
制度認知不足、利用証の掲示が鍵
東京都福祉局のウェブサイトによると、パーキング・パーミット制度で利用できる「障害者等用駐車区画」は、次の2種類がある。 ・車椅子使用者用駐車施設:利用者が乗り降りしやすいよう、幅が3.5m以上 ・優先駐車区画:通常の駐車区画と同じ幅(約2.5m程度)または約3m程度 これらの利用方法や対象者の範囲は、各地方公共団体によって異なる。そのため、どの駐車スペースを利用できるか事前に確認しておいた方がよい。利用証を持っていても、誤って注意を受けることがあるからだ。 JAFが実施した「思いやり駐車場に関するアンケート」では、優先駐車場を利用した1690人のうち、 「13%(221人)」 が「利用対象者と気づかれずに注意を受けた」と回答し、3%(64人)が「利用対象者と気づいた上で注意を受けた」と答えている。この結果から、多くの人が注意を受けていることがわかる。 この原因は、パーキング・パーミット制度の認知度が低いことにあると考えられる。実際、ネット上でも、 「マタニティマークをつけて優先駐車場を利用した際、お年寄りから『ここは子連れ優先のところではない』と怒られた」 「スーパーの優先駐車場に止めたら、警備員から『ここはダメだ』と言われた」 といった声がある。多くの人は「車椅子などの障がい者は優先駐車場を利用できる」という認識を持っているが、他の「歩行が困難な人」も利用できることはあまり知られていないのが現状だ。 今後、各地方公共団体はより積極的に啓発活動を進める必要がある。また、利用証を持っていても、すぐにわかるようにしないと、他の利用客から 「迷惑駐車」 と思われる可能性がある。警備員に注意される手間を避けるためにも、利用証は車のルームミラーにかけるなど、外から見えるように掲示することが望ましい。 妊婦や高齢者などが安心して利用できるように、この記事を通じて多くの人がパーキング・パーミット制度への理解を深めるきっかけになることを期待している。
小島聖夏(フリーライター)