農生産者の加工販売額、初の1兆円超えも個人農家は失速
農業生産者による加工品の製造・販売が加速している。農林水産省がこのほど取りまとめた22年度の6次産業化総合調査(確報)によると、農業経営体・農業協同組合等の農産加工販売額は前年比6.2%増の1兆0128億円余となり、11年の調査開始以来初めて1兆円を突破した。
相次ぐ法規制に意欲減退か
運営主体別の加工品販売額は、農業経営体9.0%増(4431億円)、農業協同組合等4.2%増(5697億円)。このうち農業経営体の内訳は、個人農家11.6%減(750億円)、法人農家4.4%増(277億円)、会社等15.3%増(3405億円)となっている。 会社形態の大規模な農業経営体と農業協同組合が加工販売全体を大きくけん引する一方、個人農家は失速が色濃くなっている。この影響で農産加工を手掛ける事業体数が減少(5.1%減/2万8980件)し、1事業体当たりの販売額が大幅に増加(12.0%増/3495万円)している状況だ。 10年代のECや農産物直売所の拡大に伴い、個人農家の農産販売額も増加基調にあったが、20年度以降は大幅な後退傾向にある。農産販売全体に占める個人農家の構成比は、19年度(10.1%)から22年度(7.4%)までの3年間で2.7ポイント低下した。 個人農家そのものの減少に加え、18年以降の食品表示基準の複雑化や21年のHACCP義務化、漬物製造業などの営業許可制の導入(24年6月施行)などを背景に、加工販売意欲が低下している恐れがある。 個人農家の品目別販売額を見ていくと、22年度時点でも漬物などの野菜加工品で92億円、ジャム類などの果実加工品で169億円と、それなりの規模を保っている。その縮小は直売所などの地域商業に少なからず影響を与える可能性がある。 許可制の導入で零細漬物製造業者の事業継続が難しくなる中、地方では自治体・団体が共同加工場の設置支援などに取り組む動きがある。大規模な農業経営体に加工販売がシフトする一方で、個人農家向けの加工支援の動きも強まりそうだ。
日本食糧新聞社