臆測広がる東京五輪、ボランティアや聖火ランナーの不安
(c)AFPBB News
【2月5日 AFP】東京五輪の開幕まで半年を切る中、ボランティアや聖火ランナー、そして観客として大会に関わりたいと思っていた人たちは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大会の規模が大きく縮小される、もしくは中止になる可能性に直面している。 垂見麻衣(Mai Tarumi)さんは、東京五輪でのボランティアを何年も前から楽しみにしていた。しかし今は、その五輪が残念な形で終わりを迎えるかもしれないと思いを巡らせている。大会関係者は観客数の制限や無観客の可能性に言及し始めているが、垂見さんは、それでは五輪らしさがなくなってしまうと考えている。 ボランティアを予定しているテコンドー会場のそばで、AFPのインタビューに応じた垂見さんは「無観客でやってしまうと、ただの競技会と変わらなくなって、五輪とはまた考え方が違うかなと思う。五輪というのは、いろんな国の人がそろって、競技をして、その文化を一緒にシェアしてお祭りを楽しんでこそだと思う」と話した。 大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)は、五輪とパラリンピックに向けて8万人のボランティアを採用したが、丸1年延期になったことで、多くの人がボランティアに参加できなくなるか、参加の意志をなくした。 垂見さんは、2010年に当時滞在していたカナダでバンクーバー冬季五輪を経験し、東京五輪のボランティアに応募した。自身は無観客でも予定通り従事したいと思っているが、できれば1年再延期してほしいと考えている。 組織委員会は「絶対に不可能」と再延期の可能性を否定している。観客の人数や、国外の観客の受け入れの可否については、今後数か月以内に決まると言われている。 ■「一生に一度」の経験 また、2日に緊急事態宣言が3月7日まで延長された中で、同月25日には全国をまわる聖火リレーが始まる。行事の簡素化やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)などのウイルス対策は講じるが、リレーには1万人のランナーが参加する見込みとなっている。 道場で空手を教える岡野和男(Kazuo Okano)さんもその一人だ。岡野さんは、東京五輪で空手が実施競技に採用されたことで、聖火ランナーを務めたいと思ったが、昨年のリレーは開始2日前に延期になった。それでも岡野さんは、沿道のギャラリーが少なくても走りたいと思っている。 「無観客でも全然うれしい。一生に一度。しかも日本の五輪じゃないとできない。できればやりたい」 田中よしこ(Yoshiko Tanaka)さんは、五輪では観客の有無が全てだと考えている。 田中さんは抽選で約30口申し込み、家族で柔道のチケットを4枚手に入れた。しかし、1998年の長野冬季五輪のスピードスケートも生で見たという田中さんは、今回の五輪では当時のような興奮は期待できないと考えている。 「(長野では)初めて入ったときのあまりの人の多さと、始まるときのびっくりするような静けさ、そして決まったときの歓声を今でも覚えている。やっぱり、生で見るのはこんなに違うのかなと思った」 「今度、東京五輪を無観客で行うということになってしまっては、それができない」 田中さんも1年、もしくは2024年への再延期を望んでいるが、中止になったとしても理解できると話している。 ボランティアの垂見さんは、感染が収まっていない中で強行開催すれば、希望と平等という五輪のメッセージ性が失われてしまうのではないかと考えている。 「もしコロナが完全に収束した状態で開催するのであれば、いろんな国から来た人も『やったぞ。コロナに打ち勝ったぞ』という喜びにあふれた状態で開催できるかと思う。だけど今のような状態のまま、押し切って開催してしまうと、世界から冷ややかな目で見られるのではないかと思う」 映像は1月29日撮影。(c)AFPBB News