ジャニーズ事務所の「ネット記事で写真NG」 法的な観点からみると?
なぜ紙媒体はOKでネットのみNG?
ネット上の報道に関し、事務所側がタレントの写真使用に制限をかけることは、それ自体すぐに問題があるわけではないことは分かりました。しかし、なぜ新聞や雑誌などの紙媒体はOKで、ネット上での掲載はNGとしているのでしょうか? 松田弁護士も、ネットとそれ以外の媒体で分けて考えるべきだとし、「ネット上での掲載となると、事務所側の管理がかなり難しくなってきます。雑誌も残るものではありますけども、ネットに比べれば公衆に対して発信されている期間は限られていますから、波及力が格段に違います」と、肖像権の管理の難しさを推測しました。 現在ではFacebookやTwitterなどのSNSが盛んで、ネット上の写真は簡単に拡散され、不特定多数がいつでも無料で見られる状況になっています。事務所側が削除請求などをしない限りはいつまでも残ってしまい、不利益があるのです。 このように不利益もあるネット上での写真掲載。そのNG措置を取っているといわれているのがジャニーズ事務所です。これについて松田弁護士は「力のある事務所ですので、事務所側である程度露出する媒体を選べる立場にあります。インターネットのような無料媒体でむやみにタレントを露出させてアピールすることよりも、タレントの肖像が事務所の管理の及ばない範囲にまで波及し、利用されることをおそれているのでしょう」と、タレントの露出をコントロールし、商品価値を守りたいという戦略があると分析しました。 写真NGの通達のようなものが仮にあったとしても、「それは基本的には『お願い』でしかないので、それを守るかどうかはメディア側が自由な意思で決定することができます。契約や合意という形になっていない限り、法的にそれを守る必要はありません(松田弁護士)」との見方を示します。なお、この通達を破った場合に、メディアが被る不利益は「所属タレントを掲載できない」「記者会見に入れない」などが想像されます。 ちなみに、上記のような不利益があったとしても、この程度のものであれば、いわゆる「脅迫」に当たらないようです。松田弁護士は「あくまでイチ事務所との関係の問題であることを考えれば、『脅迫』に該当する可能性は限りなく低いです」と、仮に裁判になった場合でも違法と評価されない可能性が高いとしました。この問題は事務所側が自社の戦略をメディアにお願いし、それを了承しているということに過ぎないようです。