韓国、フランスなどの政治的混乱は2025年の世界市場にどのような影響を与えるのか(海外)
12月3日の夜、韓国の大統領が非常戒厳を宣布した。このことは、投資家が直面する地政学的リスクの増大を浮き彫りにしている。 韓国大統領の行動は株価や為替の下落を招き、経済への懸念を高めることにつながった。 2024年はヨーロッパ、アジア、中東における政治的不安定が世界市場を揺るがしたが、2025年はさらなるリスクが迫っている。 韓国の大統領による非常戒厳厳の宣布は、政治的な不確実性がグローバル市場における永続的なリスクであることを投資家に示した。 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は2025年12月3日、非常戒厳を宣布して国民を驚かせた。この発表に至ったことに関して、大統領は野党を非難した。というのも予算案を拒否し、22件の政府高官に対する弾劾手続きを開始した野党が韓国を人質にしていると尹大統領は考えたからだ。 この命令はわずか6時間後に韓国の国会によって撤回されたが、それでも韓国の株式市場に衝撃を与えるには十分だった。 iShares MSCI韓国ETFは最大7%急落し、韓国関連株も一時大幅に下落したが、その後、損失を一部取り戻した。 また、戒厳令発令および解除中は取引が停止していた韓国のKOSPI(韓国総合株価指数)は、12月4日に約2%下落した。一方、韓国ウォンは米ドルに対して最大3%下落した。 韓国市場はその後安定を取り戻したものの、アナリストらは大統領の行動が広範な波及効果をもたらし、投資家の信頼に長期にわたる損害を与えた可能性があると指摘している。 INGエコノミクスのエコノミスト、ミン・ジュ・カン(Min Joo Kang)は12月3日、「これらの出来事が韓国のソブリン格付けに影響を及ぼす可能性があることを懸念している」と述べた。 カンは、2017年に朴槿恵(パク・クネ)元大統領が弾劾されたことが、消費者および企業の心理に打撃を与え、その後の経済活動の減速につながったことを指摘した。尹大統領は、今回の戒厳令騒動によって弾劾を求める声に直面している。 また、Capital Economicsのチーフアジアエコノミスト、マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)も12月3日、韓国をめぐって投資家に警告を発している。 「韓国では政治的に不安定な時期が訪れるだろう。それが経済への信頼を損なうことになる」 政治的不安定が生じているのは韓国だけではない。フランス政府が崩壊する可能性があることも、投資家の注目を集めている。 12月4日、ミシェル・バルニエ(Michael Barnier)首相に対する不信任案が可決された。これはエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領政権の解体につながる可能性がある。このような信任投票でフランス政府が崩壊するのは、60年以上ぶりのこととなる。 この騒動により、通貨が激しく変動している。 信任投票の実施が発表されてから、ユーロは対ドルで約1%下落したが、その後、信任投票を控えた政府の動きとともに、損失のほとんどが回復した。 フランス国債も影響を受けている。BCA Researchによると、フランス国債とドイツ国債の利回り差(スプレッド)は、12月第1週に拡大し、欧州債務危機(2012年頃まで影響があった)以来の最高水準に達したという。 「今後、10年物のフランス国債(OAT)は、利回りがかなりのボラティリティを示すと予想されるため、欧州の債券ポートフォリオにおける現在のアンダーウェイト(低い評価)ポジションが維持されることになる」と、BCAは12月3日に発表したノートで述べている。 一方、アメリカも新たな貿易戦争の予兆を見せており、ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期大統領のもとで地政学的な不確実性が高まっている。 トランプは、アメリカの経済的な敵、すなわち中国やドルを放棄すると脅してくる国々だけでなく、カナダやメキシコなどの同盟国や親しい貿易相手国に対しても、高い関税を課すとしている。 トランプが11月に、アメリカの主要な貿易相手国であるカナダとメキシコから輸入される商品に対して関税を課す計画を発表すると、通貨や自動車関連の株価、コモディティなど、あらゆる市場が動きを見せた。 イギリスの多国籍金融サービス会社、バークレイズ(Barclays)の予測によると、これら2カ国に対するトランプの関税計画がそのまま実施されれば、S&P500企業の法人利益が2.8%低下し、株価にも影響が出る可能性があるという。 2期目のトランプ政権が始まる2025年1月には、貿易戦争や関税、そして政治的規範の混乱によって、市場でのボラティリティが高まる可能性が高いと、投資家は見ている。 2024年は、中東でくすぶる紛争やウクライナ戦争が市場に衝撃を与えてきたが、2025年になってもその解決の兆しはほとんど見られない。ウクライナ戦争は2025年初頭に3年目を迎える。トランプは戦争を終結させるための仲介をすると誓っているものの、戦闘が直ちに終息するという見通しはほとんど立っていない。 終わりの見えない紛争によって、2024年はゴールドや債券、石油などのコモディティが大きな影響を受けてきた。
Matthew Fox,Kelly Cloonan