“もしも徳川家康が自民党総裁選に出馬したら”その陣容は?マネー術から考える
金銀と年貢米、幕府収入の2大要素を統括した長安。その秘訣は何だったのだろうか。 どうやらそれは自身が家康から受けた積極登用策だった。「人」である。 佐渡金山には200人近い同心(幕府の下級役人=足軽クラス)、信頼できる牢人たちを呼び寄せて長安ファミリーを形成し、領地の八王子には長安と縁の深い武田遺臣を中心とした「千人同心」を住まわせた。「江戸の西、甲州街道の守りを固める」というこちらも「長安ファミリー」だ。 長安自身の身代は3万石だったから、通常課される軍役の2倍程度の人数を身近に置いていたことになる。そしてそのマンパワーで図抜けた結果を出した。考えてみれば「灰吹法」など新しい鉱山技術を導入したのも、その専門家を厚遇で迎え信頼して仕事を任せる度量が必要だ。金銀を採掘するには人材の発掘が胆なのです。 だから、現代の総裁選でもその組織力を存分に活かしてもらいたい所。ただ、その後彼を閣僚に登用するには条件がひとつある。それは、ゴシップだ。 彼は80人ともいう側女を抱えていたそうだから、現代なら間違いなく女性問題でやらかす。女性票を失わないためには長安の生活を厳しく監視指導するのは必須なのだ。 それさえクリアできれば、選挙戦後の長安には国土交通大臣を拝命させたいところ。同省には海洋新エネルギー・鉱物資源の開発に取り組んでいるが、採掘効率の問題などで実用化の目処が立っていない。 金銀山の採掘精錬に新技術を積極的に採り入れて成功させた長安大臣なら、この問題にも果敢に取り組んでくれるのではないか。経済産業省の資源エネルギー庁と食い合う分野ではあるが、そこは茶屋四郎次郎大臣とうまく連携してマンパワーを最大限に活かして素晴らしい実りをもたらしていただきたい。
外部招聘:上杉謙信
そして最後に、家康氏には総裁選挙中も是非党外の逸材として上杉謙信先生との連携を深めてもらいたいものだ。史実でも越後の虎・謙信とは同盟を組んでいたことがある家康なら、その辺は宜しくやれるだろう。 現代で謙信が在野の大物なら、彼は新潟県の繊維産業の大物で、全国組織・N繊維産業連盟の会長あたりが妥当だろう。地元でも顔が広く富山や群馬にまで影響力を持つ謙信なら党員投票にもプラス効果をもたらしてくれる。 そして選挙後は彼に経済安全保障担当大臣のポストを与える。彼の現代におけるプロフィールを繊維業界リーダーとしたのは訳があって、戦国時代の越後が青苧(あおそ)の産地でそれを織り上げた「越後上布」が高級品としてもてはやされたからだ。 本稿の雑誌連載時には経済効果50億円と推計した青苧。その「座」(同業者組合)の総元締めが京の公家・三条西家だった。 謙信は当主・三条西実枝に取り引き条件の改善を求め流通経路の安定を図るため(主目的は別にあったが)わざわざ京に上った。彼の父・長尾為景は家来を派遣して済ませたが、謙信は自身で交渉の席に赴いた。 これこそが経済安全保障とトップ交渉の見本。南シナ海やソマリア沖の海上交通が脅かされている昨今、謙信の様な実行力のあるカリスマの登場が望まれるところ。 家康総理誕生を睨んだマネーがらみの選挙スタッフ選定は以上の通り。どうだろう、これに本多忠勝・井伊直政ら武闘派議員などを加えれば、選挙は圧勝、成立する新内閣もなかなか優秀な成果をあげてくれるのでは……? ※実在の団体には関係ありません 参考文献 『戦国時代に学ぶ「必勝マネー術」』(講談社+α新書) 『家康の政治経済臣僚』(中村孝也、雄山閣) ほか
橋場日月