秋田のスーパー居座りクマ「やせていなかった」…食べ物豊富な市街地、冬眠せず出没する可能性
降雪期の秋田県内でクマの目撃情報が相次いでいる。今年は山に木の実などがあり、専門家は「食べ物を求めて出没しているわけではない」と指摘して、引き続き注意を呼びかける。秋田市のスーパーに居座ったクマについても、市の担当者は取材に「やせてはいなかった」と証言した。(菊池蓮、橋立大駿) 【動画】クマに遭遇したときの対処法
県が運用するサイト「クマダス」によると、今年11月のクマの目撃情報は57件で、異常出没した昨年の同時期(566件)の1割ほど。しかし12月は8日現在で22件に上り、昨年ほど多くはないが、同時期(45件)の5割の水準で推移する。
直近では8日に6件の目撃情報があった。午前8時15分頃、秋田市上北手大戸の田んぼでクマとみられる動物1頭(体長約1メートル)が目撃された。午後2時50分頃には、大館市の南小学校の敷地内を歩くクマ1頭(体長約80センチ)を通りかかった20歳代女性が見つけた。同校は9日、登下校を保護者の送迎かスクールバスなどに限ることにし、体育の授業など屋外での活動を控えるといった対応を取った。このほか、大館市の市道でも8日夕方に2件の目撃情報があった。
クマの生態に詳しい東京農工大の小池伸介教授(生態学)は、「冬眠は寒いからするのではなく、食べ物がない冬をやり過ごすための手段だ」と説明。市街地に食べ物がある限り、雪が降っても出没する可能性があると指摘する。
ただ、秋田市のスーパーに侵入した雌のクマについて、秋田市農地森林整備課の今野工課長は「ころっとしていて、やせている感じはしなかった」と話す。クマは体長1・1メートル、体重69キロだった。この数値について、小池教授も「ふくよかな体形で、やせて食べ物に困っていたわけではないだろう」とみる。
山にエサがあっても市街地に出てくる理由について、東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は「市街地に近い山に1年を通してすんでいる個体が増えている可能性がある」と分析。さらに「昨年、市街地で柿を食べたクマが木の実の季節が終わっても、街中に来て柿などを食べている可能性が考えられる」という。
県は12月末まで「出没注意報」を出して注意を呼び掛けている。県自然保護課は、「クマが建物に入らないよう車庫や物置の扉を開けっ放しにせず、生ごみなどクマが食べるものを屋外に放置しないなど、対策をしてほしい」と呼び掛けている。