競合続々、バスクチーズケーキをめぐる戦い――コンビニ業界で「鬼門」だったチーズケーキを変革
「甘さは控えめに。北海道産純生クリーム、クリームチーズの味わいを強めに押し出し、白ワインやシャンパンにも合う味に仕上げました」
お酒、オードブルの品ぞろえに力を入れる成城石井ならではだ。高瀬さんによると、現在までに30万個を売り上げていて、リピーターも多い。そのため「定番化を考えている」。30代、40代女性の人気が高く、18時以降の遅めの時間帯に売れている。仕事帰りに買って帰る女性が目立つという。
火付け役、ローソンのチャレンジ
1年を通じて、各社が参戦したバスクチーズケーキ商戦。なぜこのチーズケーキはここまで人気になったのだろう。話は、ブームを切り拓いたローソンに戻してみよう。
まず真っ先に言えるのは、味そのものだ。
しっとりとなめらか。チーズの風味は濃厚で、そこにカラメルのビターな甘さが加わってくる。プリンのようでもあるし、エッグタルトのようでもあり、これが消費者に新しい体験として受けとめられた。その裏には、ローソン開発陣の大胆なチャレンジ精神があった。開発を担当した、ローソンのシニアマーチャンダイザー東條仁美さんはこう言う。
「(ローソンには)10年もの間、ロングランで売れてきたプレミアムロールケーキという存在があります。大きな成功体験。ただし、ロールケーキの存在を意識すると、大胆な挑戦ができなかった。ですから今回は、ゼロベースから新感覚の商品を作ろうと考えたんです」
そこで浮上したのが、バスク地方のご当地スイーツ「バスクチーズケーキ」だった。テストで作ってみたら、1回目からおいしい。「いけるのではないか」と手応えがあったという。ただ、いかんせん、日本でのなじみがない。どう売るか。
販売促進に携わったマーケティング本部・井上由佳子さんは、こう振り返る。
「商品名は? パッケージデザインはどんなものにしたらよいのか。これほど、様々な意見が出た開発は珍しかったですね」
たとえば商品名だ。コンビニという業態は「さっと商品を買える」ことに強みがある。お店に長時間滞在し、商品を吟味する人は多くはない。ぱっと見て知らない名前のものはスルーしがちなのだ。今度の商品はそうなりかねない懸念があった。