1億円の住戸でも固定資産税は5000万円の物件と同じ…エコノミストが「タワマン税制にメスを」と説く理由
■金融商品化するタワーマンションへの措置 税制についても、改善の余地があります。 まず1つは、金融所得課税(金融商品から得た所得にかかる税金)の拡大だけでなく、不動産所得の課税強化を検討すること。現在、多くのタワーマンションが金融商品化しており、転売目的で所有する人が増えています。このような資産に対する公平な課税は、今後ますます必要となってきます。 具体的に見てみましょう。 タワーマンションは、高層階であればあるほど実際の市場価値が高まりますが、現在の固定資産税評価額は原則として一棟全体の評価額を均等に割り振る傾向があります。そのため、実際の市場価値と評価額の間に乖離(かいり)が生じ、高層階の部屋を保有する高所得者層が相対的に低い税負担で済んでしまうケースが少なくありません。 たとえば高層階の物件は、同じマンション内でも1.5~2倍の価格差がつくことがあり、市場価値と固定資産税評価額に大きなギャップがあることが指摘されています。 つまり、1億円の市場価値がある高層階の住戸であっても、固定資産税評価額が5000万円程度であれば、約60万円(評価額の1.4%)の固定資産税になりうるということです。しかしこれでは、実際の市場価値を反映してはおらず、結果的に不公平な税制負担になりうる、というわけです。 ■投資的な不動産取得の抑制手段 投資対象としての課題もあります。 誰もが知る通り、タワーマンションや高層マンションは投資対象としても人気があり、不動産所得を得る目的で保有されることが多くあります。 投資目的でタワーマンションなどが取得されると、連鎖的にその地域の地価や住宅価格が高騰しやすくなると考えられます。 その結果、一般の居住目的の購入者にとって住宅取得が難しくなり、社会全体の負担が増加します。実際、東京都心部の新築マンションの平均販売価格はこの10年間で約2倍に上昇しており、一般家庭の住宅取得が困難になっているのは「不動産投資のせいだ」という指摘は、決してネタミやソネミの類いのものとは言いきれません。 タワーマンションをはじめとする高層マンションの不動産所得に対する課税の強化は、評価額の見直しや適正な税負担の実現を担う役目を果たします。また、投機的な不動産取得を抑制し、地価上昇の抑制や一般家庭が住宅を取得しやすい環境を整えるためにも、税制改革が必要だというのが私の考えです。 もちろん、政府が資産を完全に把握するのは非常に難儀でしょう。しかし、お得意のマイナンバーを用いることで、公平な税制改革も可能になるように感じています。