新生「らくらくスマートフォン」で戦略転換、ドコモだけでなくY!mobileやSIMフリーで出す狙いは? FCNTに聞く
レノボ傘下となった新生FCNTが、矢継ぎ早に新モデルを投入している。同社の看板商品ともいえる「らくらくスマートフォン」にも、新たなモデルが登場した。らくらくスマートフォンは、シニア向けスマホの代名詞ともいえる存在。フィーチャーフォンのらくらくホンから、ドコモとタッグを組み、継続的に新製品がリリースされてきた。その流れをくんだ「らくらくスマートフォン F-53E」は、2025年1月下旬以降に発売される。 【画像】新らくらくスマートフォンで大きく変えたところ 驚きだったのは、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileも「らくらくスマートフォン a」を取り扱うようになったことだ。もともと、らくらくスマートフォンは、ドコモとFCNTが二人三脚で広げてきた端末なだけに、マルチキャリア展開にかじを切ったのはFCNTにとって大きな戦略変更になりうる。さらに、らくらくスマートフォン aとハードウェアスペックが近い「らくらくスマートフォン Lite」も開発し、オープンマーケットにも初めてらくらくスマートフォンを投入する。 一気に販路を広げる格好になったらくらくスマートフォンだが、一方で、同シリーズはキャリアとタッグを組んだ手厚いサポートがあってこそ成り立ってきた。これまで、FCNTもオープンマーケットへの投入には慎重な考えを示している。では、なぜこのタイミングで同社はらくらくスマートフォンのバリエーションを広げたのか。 FCNTのプロダクトビジネス本部 副本部長 プロダクトポートフォリオ・マーケティング・営業戦略担当を務める外谷一磨氏と、同本部 プロダクトマーケティング統括部 副統括部長の正能由紀氏、同本部同部シニアマネージャーの高橋知彦氏にお話を聞いた。
ドコモ以外のユーザーからも「らくらく」を求める声が挙がっていた
―― まず、新生FCNTとして、改めてらくらくスマートフォンを開発することになった経緯や背景を教えてください。 外谷氏 らくらくスマートフォンの継続に関しては、われわれが残っていく上で当然のことだと思って取り組んでいました。らくらくスマートフォンシリーズは、われわれにとって大事な商品であるのは間違いありませんが、それを超えて、らくらくスマートフォンしか使えない、使いたくないというユーザーがドコモのユーザーを中心非常に多く、ある種のインフラになっています。それを提供することは、当初から検討を重ねてきました。 ―― 一方で、今回はY!mobileからもらくらくスマートフォン aが発売されました。初めてドコモ以外から発売されたらくらくスマートフォンということで、サプライズでしたが、キャリアを広げた理由はどこにあったのでしょうか。 外谷氏 背景にはニーズの多様化があります。ドコモで使い続けたい方だけでなく、他キャリアで使いたい方もいますし、他のシニア向けスマホを使っている方を見ても、求めているものは多様化しています。らくらくスマートフォンのような商品を使いたいというお声はドコモ以外のキャリアのユーザーからもいただいていましたが、なかなかそこを広げていく努力も体力もありませんでした。新生FCNTが発足し、(市場を)広げていく中でこのタイミングでの投入になった経緯があります。 らくらくスマートフォンのような商品をキャリアと広げていくには、やはりキャリアの理解が必要ですし、大事にしなければいけないポイントもあります。一番大きいのはサポートの部分で、しっかり同じ目線でやろうとできたのが、ソフトバンクさんでした。それもあって、ソフトバンクとの話は一気に進んでいきました。 ―― とはいえ、ソフトバンクにも「シンプルスマホ」のような商品があります。なぜFCNTに声がかかったのでしょうか。 外谷氏 基本的には、私たちからドアをノックしました。らくらくスマートフォンに限らず、われわれはシニアのフィールドでヘルスケア事業やコミュニティーなどを総合的に展開しています。そういった話をする中で、ソフトバンクの課題やわれわれのアセットがハマる部分がありました。 ―― 京セラがコンシューマー向けのスマホから撤退することになり、ライバルが不在になりつつあるような印象もあります。 外谷氏 そこまでの感覚はまだ持っていません。今回は3機種発表できましたが、あれを作るのにも内部ではいろいろなことがありました。業界全体として、ああいった商品を作りづらくなっているからです。ただ、サプライチェーンの問題もある中で、ああいう商品を出せた意味はとても大きいとは思っています。一方で、シャープさんもまだシニア向けスマホを作られているので、すみ分けながら継続していければいいと思っています。