辺見えみりさんの新ブランドは「体のラインも、顔まわりの雰囲気も変わった」50代の今こそ着たい服。旬ニットの着こなし方は?
「スタッフの今日のコーデ」の私服姿にファンの多いエディター・松井陽子さん。記事の中でも松井さんのスタイリングにもよく登場する、「もはや体の一部のよう」という最愛のファッションアイテムの魅力をお届けする連載企画も、いよいよ今回の取材が最後となります。 【写真で見る】素敵!辺見えみりさんが着る「コンテ」の冬ニットの着こなし 松井さんがお話を伺ったのは、この秋新たにデビューしたばかりの「conte(コンテ)」をディレクションする辺見えみりさん。松井さんが「いまの気分に合う服」と話すコンテの魅力を、辺見さんのお話を伺いながら掘り下げていきます。作り手としての辺見さんのお話、そしてこの冬早速チェックしたいニットの着こなしも、ぜひ参考にしてみてください。
小さくチューニングする少しずつ、自分は変わっているから
これまでにない新たな女性を描くブランドとして、えみりさんがユナイテッドアローズと手を組んで立ち上げた「conte(コンテ)」。ブランドを象徴するのは、色調豊かなベージュのラインナップ。そして、どこか余裕のあるナチュラルなモード感です。 都会的なのに、強さが前に出ていない。どこかキリッとしていて歯切れの良さも感じられるけれど、まろやかでしなやかで、ほんのりと抜けたような雰囲気をたたえています。ふわっと余韻を残す、その独特の雰囲気に、私はすっかり魅了されました。 「私たちって、やっぱりどこかカジュアルで、ずるっと抜くように服を着ていた、そんな世代なんですよね。その抜けた雰囲気はやっぱり好き。でも、体のラインも、顔まわりの雰囲気も変わって、以前とはやっぱり違うんですよね。いま着るなら、抜かないけれど、”抜いているような服”がいいと思ったんです」と、えみりさん。 空気をはらんで体が泳ぐようなビッグフォルム、首元がぐいっと後ろに落ちるようなゆるっとしたシルエット……。わかります、その着こなし! でも確かに、歳を重ねた女性の体は、体の線も柔らかく、首元から背中もゆるんで、甘やかに、ふんわりとしてくるもの。良し悪し、ではなく、単純に”かつての自分”とは違っているのです。 「体も、気持ちも、顔まわりの雰囲気も、醸し出す雰囲気も変わってくるのだから、自分自身も小さくチューニングしていかないと。ずっと同じだと、違和感だって出てきちゃいますよね。あとは、ほのかに香る可愛げのようなもの。この世代って、どうしても強くなっちゃうから。フェミニンまでいかないのだけれど、凛としつつ、ほんのりと可愛らしさもあったらいいなって。そんなエッセンスを込めたコンテの服が『いつもとはちょっと違う自分に出会える服』になってもらえたらって、そう思いながら作っています」 抜かなくても、抜けたように見える服。どこか可愛げのある服。それを叶えるために、生地選びに始まり、デザインへの落とし方、そして仕立ての美しさに至るまで、コンテの服はえみりさんのこだわり、そのもの。 シャツだったら、デコルテをどう見せるのか、だったらボタンの位置をどうするか、襟の高さはどう? と、何度も試着し、何度も微調整を重ねながら、一着の服が作られていくのだそう。 そして、できあがったサンプルをチームのみんなで着た時に「私にだけではなく、みんなに似合う服、みんなが素敵に見える服が、絶対」。そう言い切るえみりさんは、とても清々しくて、”コンテを世に送り出す”というミッションを背負ったディレクターなのだと、改めて感じさせられました。 「任されたからには、ちゃんと作って、お届けしたいっていう責任ですね。今回、コンテをスタートするまでに1年半くらい準備期間をいただいたんです。それがとってもよかった。時間があったので、作りたかったものが明確になって、ちゃんと形にすることができました。この店舗も、スタッフと一緒にオーナーの方に私も会いに行って、お話をさせていただいたんですよ。40年近く前から続いていた写真館で、青いタイルがモダンで素敵だなって、ずっと気になっていた建物だったんです。他にも引き合いがあるという中で、オーナーが最終的にコンテを選んでくださって。本当にうれしかったです」 どのエピソードからも伝わってくるのは、コンテを生み出すために注がれたえみりさんの情熱と決心の数々。覚悟を決めた人の放つエネルギーって、やっぱり強い。それは、鉄のように硬いものではなく、ゴムのようにぐーんと伸びる、どこまでもしなやかな強さです。 コンテの魅力は、すっと前を向き、さらに上を見上げているえみりさんのエネルギーの産物なのだと、そう感じずにいられません。 さて。話は尽きませんが、せっかくの機会なので、コンテの旬のニットスタイルをえみりさんにご提案いただくことにしました。