「未来のデジタルアート」はどこへ行く? Beeple(ビープル)の中国での最新個展から探る
世界3位の存命アーティストでの落札価格を誇るBeepleとは
Beepleと聞いて、アートやNFTに造詣のある人なら思い起こすのが2021年のクリスティーズオークションで販売された《Everydays, the First 5000 Days》だ。当時世界最高額のNFTとして、そして存命のアーティストで世界3位の高額6940万ドル(当時のレートでおよそ75億円)で落札された作品として、「デジタルアート」としてのみならず、アートの歴史に残る世界的なニュースとなった。 同時にそのニュースを見聞きして「画像の組み合わせでそんな高額に?」となった人も少なくないだろう。およそ13年間、5000日におよぶ日々のドローイングを組み合わせた画像が「唯一性」を担保するNFTとして評価されたというものだ。 《5000 days》が高騰した以降もBeepleは変わらず制作活動を続けてきた。1日たりともEverydaysシリーズの制作を欠かさないようにしてきたといい、オープニングでは6406番目の作品をライブで作り上げてみせた。
まだ日本では知られてない立体作品も登場
日本ではまだほぼ知られていないが、Beepleは《5000 days》の発表ののち、たんなるデジタルアートではない非常にソリッドな筐体の立体作品を手掛けていた。まったく異なるアプローチに、香港のM+で発表された際は「これが同じBeepleなのか」と信じられなさを感じた。 《Human One》は、Beepleがメタバース空間に生まれた「最初の人間」を描いた、4面の映像が回転し続ける立体作品だ。宇宙飛行士のようなバックパックを背負った人物が、無限に変化する荒野を背景に歩き続ける。動的に進化するBeeple最初の彫刻とNFTとを組み合わせた作品として注目を浴びた。クリスティーズで2895万ドルで落札されたこともまたニュースとなった。発表されてすでに3年が経つが、現在もアップデートを続けている。昨年の香港ではまだ腕が人間のもので、背景では動植物が活動していたが、最新版では腕がロボットに置き換わり、舞台はカタストロフを迎えた大地のようだった。