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【講師のホンネ】今こそ労務管理を見直そう 「法定三帳簿」の点検を

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SankeiBiz

 対面での労働相談が再開され、休業中の従業員に対する手当や助成金の質問をいただくことが増えている。「ほんで、なんぼ払ったら、なんぼ当たりますのや」。先日、関西で飲食店を経営する社長から相談を受けた。聞けば、休業要請期間中に従業員を休ませたので、休業手当を支払って、雇用調整助成金を受け取りたいという。助成金は宝くじでも、当てものでもないが、とりあえず話を聞くことにした。  賃金支払いの記録は、100円均一ショップで売っている給与明細の写しだけしかなく、出勤記録はノートに走り書きで仕事をした時間数が書いてあるだけ。労働者名簿はない。契約書もない。従業員のシフトはどうやって決めているのかと尋ねると、「従業員が入りたいと言ってきた時間は全部働いてもらっているから問題ないでしょ」と、細かいことを聞かれて面倒くさそうな様子。いつ働くべき人がいつ休んだから休業手当を支払うのか、書類で証明することは不可能。このレベルの労務管理であっても、かろうじて労災保険と雇用保険には加入していたため、緩和措置のおかげもあって、今回は助成金を申請できてしまいそうだ。  緊急事態とはいえ、この前例を作ってしまってよかったのか、相談を受ける側としては悩ましい。労務管理では、(1)労働者名簿(2)賃金台帳(3)出勤簿-などを「法定三帳簿」と呼ぶ。様式こそ任意だが、記載する内容や保存期間は労働基準法で定められている。  保存期間は最後に記入した日から3年。これを事業所ごとに調製し、賃金の支払いの都度、遅滞なく記載する。期限前に廃棄したり、記入がない場合など、悪質なケースでは罰則を科せられることもある(30万円以下の罰金)。  労務管理の事務処理は確かに煩雑だ。売り上げに直接つながるわけでもない。「従業員から苦情もないし」「今まで問題がなかったから」「社業が忙しいので」などと、後回しにする理由はいくらでも思いつきそうだ。  ただ、今回のような災禍が次にいつ起こるかは誰にもわからない。公の助成を受けようと思えば、少なくとも法令順守が原則だ。政府の助成が遅いと言う前に、日常に戻った今こそ労務管理に目を向け、まずは「法定三帳簿」の点検から始めてほしいと切に願っている。(松井一恵) 【プロフィル】松井一恵  まつい・かずえ 1968年、大阪府出身。2000年3月、社会保険労務士として独立開業。主に、企業の顧問や労務管理を通じて中小企業に寄り添っている。近著に、「『ブラック企業』とゼッタイ言わせない 松井式超!働き方改革」(KKロングセラーズ)がある。特定社会保険労務士、CFP認定者。

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