「人間的に最低です」仕事のデキる部下が上司への“人格攻撃”で降格処分も…裁判所が「無効」と判断したワケ
裁判所の判断
裁判所は「降格処分は無効。差額の賃金42万円を支払え(7万円×6か月分)。会社には安全配慮義務違反があるので慰謝料210万円を支払え」と命じた。以下、順に解説する。 ■ 降格処分 裁判所は「降格処分は重きに失し、合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められず、懲戒権を濫用したものとして無効」と判断した。理由の概要は以下のとおりである。 ・Xさんが誹謗中傷メールを送信した頃には、Y部長・Z専務は、Xさんの心身の異常やその原因となる事情を認識し、または認識しうる状況にあった。 ・さらに、Y部長の録音内容などに照らせば、降格処分をする際、Xさんの心身のさらなる異常等について認識できた。 ■ 安全配慮義務違反 裁判所は「会社には安全配慮義務違反があった」と判断。具体的には「Xさんが誹謗中傷メールを送信する2か月ほど前の時点において、会社は、すでに悪化していたXさんとY部長との関係やXさんの業務内容などを改善するために具体的な対策を講じ、Xさんの精神疾患発症を防止する注意義務があるにもかかわらず、これを怠っており、Xさんの発病自体が、会社の安全配慮義務違反によるものと認められる」としている。 そして、通院慰謝料として、会社に対して210万円の支払いを命じた。
メールの文章に注意!
今回の事件は、Y部長やZ専務、会社の対応の不手際があったことからXさんが精神に不調を来した。これが大きな理由となり「降格処分が無効」とされたケースである。 よって、仮に会社側に何らの落ち度もない場合、Xさんのような人格攻撃アグレッシブなメールを送信することは危険である。原審の地裁は「誹謗中傷にあたることは明らか」「人格攻撃にわたっている」と認定している。参考になれば幸いだ。 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡