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[ニュース分析]朝鮮半島に軽空母と原子力潜水艦は果たして必要か

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ハンギョレ新聞

国防中期計画発表、物議かもす    2021~2025年の国防中期計画が発表  5年間に301兆ウォンを投入する史上最大の増強  軽空母や原子力潜水艦などの導入を公式化  朝鮮半島の条件に合わないという批判    「朝鮮半島が空母なのに、空母の導入は非効率」  F35B搭載の5兆ウォン事業、公論化なく  作戦に限界のある原子力潜水艦の導入は実効性も疑問  軍縮の約束後、北朝鮮の反対にもかかわらず兵器導入 「尻尾が胴を揺さぶることがありうる」。中央大学のイ・ヘジョン教授はこのように懸念した。戦時作戦権の移管や米中対立などを前面に出して軍備増強を当然視し、軽空母や原子力潜水艦などの戦略兵器を導入することに対する指摘だ。両兵器体系は朝鮮半島の事情に合わないという指摘が続いていた。国防中期計画に盛り込まれた軍備増強計画により、兵器体系(尻尾)が北東アジアの平和の全体(胴)を揺るがすことがありうるという懸念が出ている。  「南北は、軍事的緊張が解消され、相互の軍事的信頼が実質的に構築されることにより、段階的に軍縮を実現していくことにした」  2018年4月27日の「板門店宣言」の一節だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はこの日、「恒久的で強固な朝鮮半島の平和体制の構築」を約束した。現実はどうだろうか。10日に国防部が発表した2021~2025年の国防中期計画では、5年間に301兆ウォン(約27兆円)の投入が予告された。減額ではない。年平均6.1%の増加だ。この期間中に韓国は日本の国防費を追い越す。2020年基準で韓国の国防力はすでに世界第6位だ。費用だけの問題ではない。今回の中期計画では「軽空母」という名前が初めて登場し、原子力潜水艦の導入を事実上公式化した。 保守陣営さえ「妥当性の検証を」  軽空母と原子力潜水艦は、軍の長きにわたる念願の事業だった。以前から軍は、これらの兵器体系が、北朝鮮の核兵器とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)という非対称戦力に立ち向かうことができる唯一の戦力だと主張してきた。戦闘機を搭載する空母は、満載排水量基準で7万トン級以上は大型空母、4万~7万トン級は中型空母、4万トン級以下は軽空母に分類される。米国は12隻を運用中だが、甲板の長さだけで300メートル近くになる大型空母だ。大型空母に比べると、軽空母のサイズは半分以下だ。中国は6万7500トン級の中型空母の遼寧艦に続き、同級の山東艦を運用している。2030年までに大型空母を含め計4隻の空母を保有する計画だ。日本も最近、空母導入に熱を上げている。日本は「いずも」と呼ばれる2万7000トン級のヘリコプター搭載型大型輸送艦艇を、2025年までに軽空母に改造し配備すると明らかにした。これに、2018年12月に日本が韓国海軍艦艇に対し哨戒機から威嚇したのに続き、昨年7月には中国とロシアが米国を狙い合同哨戒飛行演習を実施するなど、海軍力増強の要求が提起されている。ロシア軍用機が独島領海を侵したのもこの時だ。  にもかかわらず、国防部が空母事業を“空母”という名前さえ付けられなかった理由は明らかにあった。まず、中国や日本とは作戦条件が異なる。日本は太平洋に直面しており、海上作戦区域が広大だ。中国も海岸線だけで1万キロメートルほどにもなる。しかし、韓国はこれらの国とは比べてみると空母の導入は必要ないという意見は、進歩・保守の区別なく同意されていた。慶南大学極東問題研究所のキム・ドンヨプ教授は11日、ハンギョレの電話インタビューで「朝鮮半島と近隣海域を考えれば、清州(チョンジュ)や原州(ウォンジュ)などの基地はそれ自体が立派な甲板なのに、あえて海に空母を浮かべる理由はない」とし、「特に空母に載せられる戦闘機のF35Bより、作戦半径が300キロメートルほど広いF35A(最大1100キロメートル)があるという点でも、軽空母の導入は非効率的だ」と説明した。このような批判は保守陣営からも出ている。昨年10月5日、米国の保守派のシンクタンクであるヘリテージ財団のダコタ・ウッド(Dakota Wood)先任研究員は「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)とのインタビューで、「東西海岸の過密な戦場の環境に少数の大型の標的(揚陸艦や軽空母を意味する)となる朝鮮半島での展開は、極めて悪いアプローチ方法」だと指摘した。未来統合党のキム・ジュンロ前議員は昨年10月、海軍国政監査で「(現在の戦力でも)朝鮮半島全体を防御するのには十分なのに、なぜ空母が必要なのか。妥当性を検証しなければならない」と主張したほどだ。  にも関わらず、空母は現実となった。軽空母だとはいえ空母は空母だ。米国の空母を基準とする場合、軽空母は主に海兵隊の強襲や上陸作戦を支援するが、韓国が導入する軽空母はF35Bなど航空作戦中心の作戦を展開するものだと見られる。中期計画で推算する建造費用は1兆8300億ウォン(約1600億円)だ。しかし、これは推定でしかない。2015年に海軍戦力分析試験評価団の依頼で作成された「次世代の先端艦艇建造の可能性を検討する研究報告書」によると、3兆1509億ウォン(約2800億円)が投入されると予想される。さらにこれは、空母に搭載する戦闘機やヘリなどの兵器体系は除いた金額だ。中期計画の通りなら垂直離着陸戦闘機を運用することになるが、現時点で実戦投入が可能な垂直離着陸機は、1機あたりの価格が1億ドル(約106億円)を超える米国ロッキード・マーティン社のF35Bだけだ。日本が2025年までいずも級2隻にそれぞれ20機を配備すると発表した戦闘機もF35Bだ。軽空母事業の事情に通じる軍出身のある関係者は「戦闘機3機の編隊が稼働することを前提とする場合、12機が軽空母に搭載され、残り4機は教育訓練に使われるとみられる」とし、「16機を基準にすると、戦闘機の購入費用だけで2兆ウォン(約1800億円)を軽く超えることになる」と説明した。  これにヘリの投入費用まで加えれば、3兆ウォン(約2700億円)に迫る。10分の1程度だと予想される管理費用を除いても5兆ウォン(約4500億円)を超える大型事業だ。にもかかわらず、導入の趣旨さえ明確ではないという批判が出ている。中期計画では「超国家、非軍事的脅威を含む全方位の脅威に主導的に対応し、朝鮮半島の近隣海域と遠海海上交通路を保護するためもの」だと明らかにしている。これに関連して平和ネットワークのチョン・ウクシク代表は「既存の戦力でも周辺国の脅威に対する抑制が可能なのに、軽空母でどのような作戦を行うということなのか明確ではない」とし、「軽空母自体が防御に脆弱であり、空母を造るとむしろ駆逐艦などの追加の戦力増強が必ず伴われる。莫大な軍備増強が予想される事業だが、公論化されていない」と指摘した。軽空母自体が「攻撃的な軍事力」だという点で、今後衝突の原因となることがありうるという分析も出ている。特に搭載が予想されるF35Bは、防御用ではなく戦闘用(攻撃用)であり、空母を海に浮かべて作戦に突入した瞬間、周辺国との衝突を懸念せざるをえない。中央大学のイ・ヘジョン教授は「我々が中国と軍拡競争をするということは想像できないことで、これは日本とも同じだ」とし、「(軽空母などによって)中国に見下されないようにし、日本から独島(ドクト)を守り、北朝鮮の武力も抑止できるということだが、(兵器体系の運用過程での)それ以上の軍事的緊張に対しては深く考えていないようだ」と指摘した。正義党のキム・ジョンデ前議員は「各種の兵器体系の導入とともに、米国の中国牽制戦略に関わる可能性が高まっている」と述べた。 平和が絶対的な利益、最後は外交で解決を  たとえ脅威が発生しても、軽空母や原子力潜水艦などの軍備増強を通じては、問題解決は難しい。特に独島や離於島(イオド)などを巡る中国や日本との対立は、外交的解決が国益のためにも望ましい。イ・ヘジョン教授は「北朝鮮であれ、中国や日本であれ、私たちは平和がもたらす絶対的な利益を考慮しなければならない」とし、「そのためには、軍備増強よりも、文在寅政権の本来の基調通りに東アジアの平和体制強化のために努力するのが望ましい」と説明した。国防部が言う「海上交通路の保護」も、空母よりは現在の駆逐艦や潜水艦で対応することで十分だという分析もある。参与連帯のファン・スヨン平和軍縮センターチーム長は「空母は交通路の確保ではなく制空権確保のための軍事力であり、空母単独では作戦は不可能だ。空母の防衛のために艦隊が出動しなければならないという点で、交通路の保護に空母を使うということ自体が合わない」と説明した。  原子力エネルギーを推進燃料とする原子力(推進)潜水艦も俎上に載せられた。今回の国防中期計画案に「原子力」という単語は登場しない。ただし、「武装搭載能力と潜航能力が向上した3600トン級および4000トン級の潜水艦を建造する」という文言が存在する。国防部はこれについて「現段階で(原子力潜水艦だと)言うのは適切ではない。適切な時点になれば改めて話す機会があるだろう」と述べた。曖昧な返答にも関わらず、原子力潜水艦の建造も軽空母のように既定事実として受け入れられている。原子力潜水艦は、2016年に北朝鮮がSLBM発射に成功した直後、保守陣営を中心に、SLBMを搭載した北の潜水艦を監視・追跡することができる兵器体系に選ばれてきた。北朝鮮のディーゼル潜水艦と比較した場合、はるかに長い潜航能力と速力のためだ。  原子力潜水艦は、理論的には燃料供給が必要ではなく、水上に浮上することなく続けて相手を監視できる。速度もディーゼルの3倍以上だ。出動待機状態である北朝鮮の潜水艇の探知や追跡などの作戦で有利だということだ。原子力潜水艦の導入は、文在寅大統領の大統領選挙時の公約でもある。与党の共に民主党も同じだ。民主党内の政策シンクタンク機能を担う民主研究院が2017年10月に発刊した『イシュー・ブリーフィング』の「原子力推進潜水艦5問5答」には「北朝鮮のSLBMを抑止するための最も現実的な対応策」だと紹介されている。  既存の潜水艦に比べ性能は優れているが、実効的な側面から、原子力潜水艦はむしろ軽空母よりさらに前からの議論の的だった。1隻あたり1兆5000億ウォン(約1300億円)前後の費用が予想される高性能の原子力潜水艦が、韓国の作戦区域にふさわしいのかという疑問がまずある。キム・ドンヨプ教授は「高性能の原子力潜水艦と言っても、相手を探知できる距離は10キロメートル以内で、北朝鮮の潜水艦を常に探知するためには、北朝鮮の領海に入っていなければならないことを意味する」とし、「それ自体が問題になりうること」だと説明した。北朝鮮の潜水艦が移動するのをあらかじめ探知し追跡するとしても、その内部にSLBMを装着しているのか、そしてそれが果たして韓国に向かうのかを先に判断するのは難しく、場合によっては起きなくてもよい紛争を誘発する可能性も排除できない。原子力潜水艦の長所が短所になることもありうる。例えば、原子力潜水艦は原子力動力装置とタービンの減速装置から出る騒音を消すことができない。原子炉を止めることができないからだ。むしろディーゼル潜水艦の方が、エンジンを停止し、隠密に移動できる。戦場の条件により、どの潜水艦が有利かの断言は難しい。 史上最大級の軍備増強、調整が必要  原子力潜水艦の難題はまた他にもある。開発が順調だという保障がない。濃縮度20%未満のウランを利用することで核拡散防止条約(NPT)や国際原子力機関(IAEA)の安全措置協定に違反しないとしても、「いかなる軍事的目的のためにも(原子力は)利用されない」と規定した韓米原子力協定という敷居を越えなければならない。ただし、大統領府のキム・ヒョンジョン国家安保室第2次長が「韓米原子力協定と(原子力潜水艦)は完全に別物であり、全く関連性はない」と主張したことがあり、米国との事前調整があったのではないかとの観測も出ている。しかし、それとは別に、原子力潜水艦に積極的な態度に対しては、これまでの脱原子力基調と相反するという批判は避けられないだろう。  8月15日の大統領の光復節の祝辞では、韓日関係を越え、南北関係そして国政全般の成果までを盛り込んだ。昨年、文在寅大統領は祝辞で「平和に繁栄を成し遂げる平和経済を構築し、統一への光復を完成しようと思う」という意向を明らかにした。しかし、昨年の祝辞の翌日、北朝鮮の祖国平和統一委員会は「南朝鮮当局者とはこれ以上話す言葉もなく、再び対座する考えもない」という声明を出した。理由は何だろうか。金正恩委員長は7月、最新兵器の導入と韓米合同演習の中断を求めた。しかし結局、8月11日に韓米合同演習は実施され、8月14日に291兆ウォン(約26兆円)の投入を予告した国防部中期計画が発表された。軽空母や原子力潜水艦建造などの中期計画だけを見ると、今年もこれまでと状況は変わらない。チョン・ウクシク代表は「史上最大級の軍備増強を続け、南北関係と朝鮮半島の平和プロセスを正常化するのは困難だ。今からでも調整が必要だ」と述べた。 ハ・オヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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