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論説コラムー「日本初のワイン」は福岡?(上)

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オルタナ

「真実は忠利」とスクープ

そんな中、この特区認定を機に取材を進め、特ダネをスクープした新聞があった。毎日新聞である。2016年11月2日付夕刊の1面トップに「江戸初期に 藩主忠利が製造指示」の大見出しが躍った。取材のネタ元は熊本大学永青文庫研究センターで、忠興ではなく忠利、もちろん、製造場所も大分県中津市ではなく福岡県京都郡みやこ町という正しい歴史がようやく明らかにされた瞬間だった。 真正な史実。これで一件落着となるはずだった。しかし、実際にはそうならなかった。皮肉なものである。苦情や抗議が殺到したのだ。 「葡萄酒といっても醸造酒じゃなく混成酒だろう」という批判が多かったが、驚いたのは山梨県庁から「日本初は山梨だ」という苦情が来たことだ。一方、浮かれた地元テレビは「福岡で日本初のワイン」「ワインはクリスチャンであるガラシャ夫人のミサのため」とありえない取り上げ方をしている。日本最古のワイン史料ではあるが、「日本初のワイン」かどうか断定できない。忠利は島原・天草の乱に出陣している。細川藩はキリシタンを弾圧した側でありミサを行うはずもない。 これでは、後世へ誤った歴史が伝えられかねない。そう危惧を抱いた人物がいた。2010年から熊本大学永青文庫研究センターに勤務、永青文庫から預かっている5万8000点の史料のうち近世初期の史料を毎日、コツコツと読み込んでいたこの女性は、研究者の責任として、徹底的に史料を読み込み、それに基づいて真相を詳しく明らかにしようと決意する。 その人こそ後藤典子特別研究員であり、その成果が2018年に完成した「小倉細川家の葡萄酒造りとその背景」という論文である。 日本ソムリエ協会の教本記載につながるその論文とは? 次回に詳報する。(続く) 原田勝広 オルタナ論説委員 日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

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