Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

さかいゆう、コロナ禍に開催したツアーで露わになった音楽への思い

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
音楽と人

さかいゆうが有観客のツアー〈さかいゆう DUO TOUR “Touch The World & More”〉を開催した。「ライブホール・ライブハウスにおける新型コロナウィルス感染拡大予防ガイドライン」に基づいて、衛生強化対策を取って行なわれたツアーの全行程が終了した数日後、さかいゆうに話を聞いた。

8月4日、渋谷クラブクアトロ。5ヵ月ぶりに訪れたライヴハウスのフロアには整然と椅子が並べられ、オーディエンスはマスク着用と会場から配布されたフェイスシールドを装着していた。チケット返金を希望した人も多かったせいか、閑散としたフロアはどこか異様な光景でもあった。今さらながらライヴハウスに日常は戻ってきていないことを実感しつつ始まったライヴ。さかい、そして今回のDUOツアー〈Touch The World & More〉のメンバー、望月敬史(ドラム)との2人体制によるステージは、いつもと違う状況下であることを昂然と無視するかのように音楽と戯れていた。ループマシンを駆使して即興性の高い演奏を披露するさかいと、それに呼応してフィジカルなビートを繰り出す望月。そこにはただ音楽を鳴らすことの喜びだけが溢れかえっていて、その喜びの渦にフロアも静かに巻き込まれているようだった。それは彼自身が3月にリリースしたアルバム『Touch The World』で露わにしている音楽への思いと同じものだ。ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンパウロの著名なスタジオで現地のミュージシャンとレコーディングを行ったアルバム。そこでの音楽体験を噛みしめるように、彼は自分のために歌を唄っていたのだ。誰かを救うためでもなければ励ますためでもなく、自身の孤独を埋めるために紡いだ音楽。それは、クアトロに集まった一人一人の孤独を埋めるものでもあったと思う。後日、そんな彼にインタビューをした。彼は滅多なことでは本音を口にしないタイプのミュージシャンだが、ツアーが終わった直後だからか、いつもより饒舌だったのが印象的だった。 ――ツアーが終わりまして。 「で、今ナチュラルハイですね」 ――こういう状況下だけに、やるほうも観るほうもいつもと違う思いで向き合うライヴになってしまうものだと思いますが、自分的にはどうでしたか。 「うーん、どうなんでしょうねぇ」 ――個人的には5ヵ月ぶりのライヴハウスだったんで、特別な思いがあったんですけど、さかいくんはどうだったでしょうか。 「まぁ……本音で言うと、そんなに変わらなかったですね、普通のライヴと」 ――そうだろうなってライヴを観て思いました。コロナがどうとかガイドラインがどうとか関係なく、いつも通りにやってるなって。 「そうですね。というかそもそも僕がコロナのことをすごく気にしていたら、ライヴ自体やらないと思うんですよ。しかもツアーまで。でもツアーをやるってことは、そこまで本人が気にしてないってことでもあり」 ――で、ガイドラインを守りつつ、いつも通りにやったと。 「そうですね。ガイドラインとか対策はちゃんとやったし、こういう状況で来るか来ないかもお客さんの自由だし、それでも来てくれた人の前では一生懸命唄う。つまりそこはいつも通りのことで。ただ、ひとつ違うことがあるとすれば、やっぱりこういう状況の中でもライヴに来てくれたってことにはすごく感謝の気持ちがあります。あとはスタッフに対する申し訳なさかな。やっぱり今回のツアーって収支を成立させるのがすごく大変だと思うから。それでもツアーをやらせてくれたことにはすごく感謝してますね」 ――ちなみに今回のツアーは当初から2人体制で廻ることが決まってたんですか? 「そうです。演奏の自由度を求めたというか。例えば3人だとバンドになっちゃうじゃないですか。そうすると演奏に決めごとが多くなっちゃうし、完成形に近づけるようなスタイルになるけど、2人だと僕がいきなり弾き始めても、それにただ合わせて好きにやればいいっていうか」 ――そのぶん1人でやることがあって大変そうだったけど。 「だからステイホーム期間はその練習ばっかりやってましたよ。あと、コロナでライヴやるにしても人をたくさん入れられないし、デュオっていうスタイルはちょうどいいなと」 ――だから音源とはまた違ったアレンジが楽しめるライヴで。 「10年やってようやくわかったんですけど、結局オリジナル音源と同じものにはならないんですよ。どんな鉄壁なバンドメンバーを集めても、ライヴでそこを目指すのは違うというか」 ――でも以前は目指してた時もあったような。 「そもそも〈世界基準のJポップスを作るぞ〉って意気込んでましたからね、昔は。でも実際に自分が好きだったミュージシャンたち――今回のアルバム(『Touch The World』)を作る中で思ったけど、あれと同じことをステージで再現することは不可能なわけじゃないですか」 ――現地に行ってそれぞれのミュージシャンとやらないと(笑)。 「やっぱりファンクとかソウルって、彼らの音楽なんだなってすごく思ったし、それを音源にしたものと同じことを再現するのは不可能で。だったらバンドじゃなくてデュオっていうスタイルでやったらどうなるんだろう?っていう」 ――音源の再現ではなくて、自分がその場で音にどう反応して何を出すかっていうライヴで。つまり、さかいゆうの本質が見えてくるというか。 「あぁ、そうですね」 ――むしろ本質しかないライヴだったと思います。本来はコロナがどうとか久しぶりのライヴハウスだからだとか、音楽以外の余計な要素が入り込んでおかしくない状況なんだけど――。 「僕はいつも通りにやったという」 ――そこがよかったんですよ。コロナとかソーシャルディスタンスとかお客さんの数とか関係ない、自分はいつも通り音楽をやってるっていうスタンスを表明してるようなライヴだったというか。 「そういうアティチュードを示してる感じっていうのは、特に今回は出ちゃってたのかもしれないですね」

【関連記事】