高知東生/山口達也さん、一緒に依存症を克服しよう〈彼に必要なのは依存症の経験がある仲間です〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
「やめようと思えば、いつでもやめられる」――。二度目の事件を起こしても彼はそう考えているかもしれません。僕は薬物で彼はアルコール。依存の対象は違いますが、彼の報道に触れていると、かつての自分の姿をみている気分になります。 9月22日、TOKIOの元メンバー、山口達也さんがバイクで信号待ちの乗用車に追突したというニュースが飛び込んできました。山口さんの呼気から基準を上回るアルコールが検出され、酒気帯び運転の現行犯で逮捕されたというのです。 山口さんがアルコール絡みの事件を起こしたのはこれで二度目です。 2018年には酒に酔った状態で女子高生に無理やりキスをしようとして、強制わいせつの疑いで書類送検されています(起訴猶予処分)。この事件によって山口さんはTOKIOを脱退、ジャニーズ事務所の退所を余儀なくされました。当時からアルコール依存症が指摘されており、その後、女性週刊誌のインタビューで禁酒したと語っていたにもかかわらず、またしても酒が原因で法律違反を犯してしまいました。 今回の報道後、僕はツイッターでこう呼びかけました。 〈山口達也さんの事故の件を聞き衝撃を受けている。「お前と一緒にするな」とバッシングを受けることは覚悟している。でも依存症は根っこは同じなんです。山口さん今度こそ俺達の自助グループに繋がって欲しい。山口さんの辛さや孤独を一番理解できると思う。周囲の皆さんどうかサポートの上繋げて下さい〉(9月22日付) 〈山口さん依存症の可能性が高いと思ったので俺も勇気を出してツイートしました。助けになりたいと心から願っています。 そして助けにまわることで俺たちも助けられます。 依存症は甘くない。一人では回復できない病気なんです。〉(同前) 僕自身は依存症からの回復途中であり、完全に脱したわけではありません。この9月30日で執行猶予期間は終わりましたが、依存症に完治という言葉はないし、偉そうに上から目線で語るつもりもない。ただ僕には山口さんがどのように苦しんでいるか、よく分かります。 僕が覚醒剤と大麻所持の現行犯で逮捕されたのは4年前のことです。 16年6月24日、愛人女性と横浜市内のラブホテルで過ごしていたところ、「動くな」と大人数の捜査官が部屋になだれ込んできました。通称マトリ、厚生労働省の麻薬取締官です。目の前にある全てのものがスローモーションに見え、「終わった」と思うと同時に、ほっとした感情が沸き起こりました。
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高知 東生/文藝春秋 2020年11月号