TRICERATOPSのニューアルバム『Unite/Divide』に見る、洋楽ポップスの迫力を踏まえた現在のロックンロールとは?!
「歌いたいテーマとバンドサウンドが見事に合致したアルバム」。通算12枚目となるニューアルバム『Unite/Divide』についてTRICERATOPSのボーカル&ギター、和田唱はそう語る。今年、デビュー25周年の節目の年を迎えた3ピースバンド、TRICERATOPS。2年半の活動休止期間を終え、復活ライブ『THREE HORNS IS BACK 2020』を経て彼らが作り上げた『Unite/Divide』からは、ここ数年の音楽業界や世界を取り巻く混沌に対する憤りや焦燥が、色鮮やかな音と共に溢れ出す。かつて『WE ARE ONE』と謳ったアルバムを作り上げていた彼らが思う、Unite(団結)とDivide(分裂)について、すべての詞曲をてがける和田唱に聞いた。 【全ての写真】TRICERATOPS・和田唱の撮り下ろし写真(全16枚)
きっかけは…ミスチルの桜井和寿さん!
――『Unite/Divide』は間違いなく、TRICERATOPSが停滞せずに挑戦し続けていることを感じるアルバムですよね。今までのTRICERATOPSにはなかった要素もふんだんに盛り込まれている。 その感じがワクワクするよね。むしろ、期待してた感じと違う! とさえ言われたいぐらい、『変化する』ってことが俺は好きみたい。しかも、この間出した俺のソロアルバムとも全然違う感じになってるでしょ? 同じ人間が詞曲を作ってるのに、どこまで短期間で変化していけるか?っていうのは、やってる本人もちょっと面白いんだよね。もともと振り幅のあるアーティストになりたいっていう憧れがあるけど、今回はそれが自然に出来たかもしれない。 ――そもそも2022年はデビュー25周年目の節目の年。そのタイミングでもう一度TRICERATOPSとして新たなアルバムを出そう、と思えたのは? 2020年末にトリビュートアルバム『TRIBUTE TO TRICERATOPS』を出したでしょ? あれに参加してくれたミスチルの桜井(和寿)さんが、トリビュートには以前俺ら3人と一緒に結成したユニット、Quattro Formaggi(クアトロ フォルマッジ)で参加したいって言ってくれたの。ちょうど俺もソロ活動中の時期だったから、桜井さんのスタジオでメンバー3人が久々に演奏したんだよね。 まずは、桜井さんが作ってくれたデモ音源をもとにリハーサルをしたんだけど、3人で演奏するのがちょっと変な感じでさ(苦笑)。その様子を桜井さんがブースの向こうから動画で撮ってくれてたよ(笑) ――なんと! 桜井さんのおかげだったとは。 厳密にいうと、実はQuattro Formaggiのレコーディング前に3人で久々に会ってたんだよね。そしたらみんな何かぎこちなくてさ。佳史はいきなり、売れてる某バンドを挙げて『俺は最近彼らが好きだから』とか言い出すし。それどういう意味?みたいな(笑)でもそうやって何度か3人で会って、っていうか飲みに行ってコミュニケーションのウォーミングアップをしたり、その後やった復活ライブ(『THREE HORNS IS BACK 2020』)が想像以上に良かったのもあって、どんどんいい感じになっていったというか。だから精神的にもTRICERATOPSのアルバムを作るための準備が整った、ということなんだろうね。 ――万全の状態で今回のアルバム『Unite/Divide』の準備を始めることが出来た、と。 そうそう。最初にふたりに渡したデモが、これで曲のイメージ伝わるかな?っていうぐらいシンプルな弾き語りの音源で。ドラムもベースも、俺の頭の中にアレンジのイメージはあるんだけど、デモ音源にそれを打ち込んでしまうと、ふたりはレコーディングでそれをなぞる形になっちゃうでしょ? そうじゃなくて、今回はふたりにもアルバム作りにずっと長く関わって欲しかったから、3曲目「CLUB ZOO」みたいなビートの曲でさえ打ち込みをしないで、アコギでドゥッドゥッドゥドゥドゥッって弾いてさ(笑)。俺がイメージしてるものよりも、“うわ!そっちの方がいいじゃん!”っていうものを、林と佳史のふたりに出して欲しかったの。 ルールがあるとすれば、「普通じゃないもの」。それだけをお願いして、佳史はそこにドラムを打ち込んで、林もそこにベースの音を入れるって感じで進めていったんだよね。 ――その「普通じゃないもの」というのは、今までのTRICERATOPSっぽい感じではないもの? それもある。あと、よくある感じもNG。俺は厳しいよ、その辺は(笑)。それでまず出来たのが、「マトリクスガール」と「THE GREAT ESCAPE」の2曲。他の曲も詞曲は全部出来てたんだよね。 ――恋愛や夢や希望を歌うのもロックだけど、反体制的であることもロックンロールの原点というか。少なくとも今回のアルバムは「本来のロックンロールとは何か?!」をTRICERATOPSとして初めて追求した作品じゃないかなと思うんです。 ほんとそう思う。むしろ今回はラブソングが少ないよね。そんなとこもトライセラとしては極めて例外だし。ロックが反体制の音楽だとするなら……だとしたら、今回初めてロックアルバムを作ったなって思う。