戦友のためにお茶をたてる千さん

　　特攻隊の前線基地・旧海軍航空隊串良基地から出撃した戦没者の追悼式が22日、鹿児島県鹿屋市の串良平和アリーナで営まれた。茶道裏千家の「和合の茶会」との併催となり、海軍の特攻隊員だった前家元・千玄室さん（101）が「献茶の儀」を執り行い、たてたお茶をささげて仲間の 冥福めいふく を祈った。 【写真】建立された徳島白菊特攻隊の慰霊碑に敬礼する千さん（手前） 　市によると、同基地は1945年3月から特攻隊の出撃基地となった。全国から部隊が集まり、特攻隊などとして出撃した573人が戦死した。

　式典は、同基地跡に慰霊塔が建った69年10月以降、毎年この時期に開催している。この日は荒天の影響で、慰霊塔がある平和記念公園から屋内の同アリーナに会場を移して実施。市や海上自衛隊鹿屋航空基地の関係者、遺族ら約850人が出席した。 　千さんは献茶の儀を終えると、お茶を振る舞った戦友との思い出などを披露。「戦友たちは、家族を守るために『俺たちは死んでいくんだ。靖国で会うぞ』と言葉を残して出て行った。どうか皆さん、特攻の意味を知ってあげてください」とあいさつした。

　同市の中西茂市長は「先の大戦で学んだ教訓を心に刻み、市民が安心して暮らせるまちづくりの実現に全力を尽くしていきます」と式辞を述べた。その後、遺族らによる献花や、特攻隊員が残した遺書の朗読、鹿屋女子高3年の女子生徒による「平和へのメッセージ」が披露された。 　式典に先立ち、慰霊塔の近くに建立された「徳島白菊特攻隊」の慰霊碑の除幕式もあった。

　建立には、旧海軍航空隊串良基地から出撃して亡くなった荒木圭亮少尉（当時23歳）のおい（63）（東京都）が「国のために命をささげた隊員たちをきちんと慰霊したかった」と尽力。同隊に一時所属し、碑文を手がけた千さんは慰霊碑に向かって敬礼し、出撃順に刻まれた戦死者56人の名前をじっと見つめていた。