<強者に勝て!・’21センバツ下関国際>出場への軌跡/1 「全員でやる意識」徹底 /山口
2020年、下関国際の夏は2回戦で終わった。新型コロナウイルスの影響で中止になった全国高校野球選手権山口大会に代わる独自大会で、下関商を相手に1―2で敗退。1年生主体の若いチームは、劣勢でも終盤で粘って逆転を狙う下関国際の野球ができなかった。 「やっぱりこういう結果になったか」。捕手で4番を務める守優雅選手(2年)は、技術面以前の課題を痛感していた。「(1年のころから)ずっとチームがまとまることが大切だと言われ続けてきて、わかっていないままだった。試合の結果になって返ってきた」。試合後の帰りのバスの中やミーティングで、坂原秀尚監督(45)は選手らに何度も説いた。「普段の練習でチームが一つになれていないところが、試合の苦しい場面に出ている。100人いても1人でもやっていなかったら、(99人は)やっていないことになる」 チームを立て直すため、坂原監督がまず始めたのは意識改革だった。徹底したのは「全員でやる意識」だ。練習メニュー、準備、寮での食事や洗濯などチームでルールを決めてみんなで取り組んだ。そうすることで、各選手が自分だけでなくチーム全体のことを考えられるようにした。 20年9月には、甲子園を経験したコーチが加わった。下関国際が夏に初出場(17年)した際の主将、植野翔仁(しょうと)さん(21)だ。現役時代は投手で、球速が130キロ台に届かず、限界を感じていた。だが坂原監督の指導の下、「自分ではなくチームのために」と自身をどう生かせるか考えた結果、変化球に磨きをかけて夏の甲子園で活躍した。「弱い選手でも甲子園の投手になれるチャンスがある」。坂原流の指導をそう評し、選手らに伝えている。 チームのモットーは「弱者が強者に勝つ」。坂原監督の就任当初から16年間、変わっていない。「エリートではなかった」と振り返る坂原監督自身が、現役時代から大事にしてきたスタイルで、指導者になっても貫いている。下関国際の選手は有名強豪校と違い、多くが中学時代からのスター選手ではない。加えて1年生中心のチームだ。彼らがどうやって立ち向かえば勝てるのか。意識改革はそのスタート地点だった。 ◇ 第93回選抜高校野球大会に挑む下関国際(下関市)がセンバツへの切符をつかみ取るまでの軌跡をたどる。【堀菜菜子】 〔山口版〕