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【難病・魚鱗癬】息子の外見をディスる声を聞いた若き母、心の叫びを声に出した瞬間「暗闇から手を伸ばそう!」と受け止める父

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 難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の過酷な病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』の著作を綴った「ピエロの母」が医師から病名を宣告された日、母は我が子の「運命」を感謝しながら「これからの親子の人生を豊かなものにしよう」と新たなる決意をした。  今回は、我が子の難病の不遇、世間からの蔑視、露骨な差別を生活の場で受けた若き母の心の叫び、それを受け止める父―――息子は生きている! その事実を幸福として受け止めたとき、希望の光が見えてきた。 この記事の写真はこちら ■心の叫びを声に出すとき 休日の朝、私は外から降り注ぐ光でさえも恨んでいた。 世界がずっとずっと、暗闇だったらいいのに。 暗ければ暗いほど、見られることはないのに。 そんなことを考え、カーテンから差す光を見つめていると、目を覚ました夫が私の傍(そば)に来た。 けれど、今までに感じたことのない感情に襲われ「近寄らないで」と言って、夫を遠退けた。 「こやんといて!」 「こやんといてってば!」 そう言って、私は何度も暴言を吐き、夫の胸を叩き、腕を引っ掻いた。 それでも離れず近付く夫に、私は涙を流しながら、 「くるな!!!」 「くんなって言っとるの!!」 「もぉ嫌やぁー!!!!!」と言って叩く手に、さらに力を入れた。 その間、夫はずっと無言で、悲しい目をしていた。 だけど、私は、私自身を止められない。 叩いて、叩いて、引っ掻いて、押し退けてを繰り返し、 私が疲れてきた頃、夫は私を強く抱き寄せた。 そこでやっと、私は心の叫びを、声に出して叫ぶことができた。 涙を流すだけでなく、泣き叫んだ。 夫の胸の中で、大きな声で叫び、ひたすら泣いた。   そして、ずっと黙っていた夫が、落ち着いた声で私に話し始めた。 「辛いのは母ちゃんだけじゃないんやでな?」 「どんなことでもいいから、僕に話して」 「ひとりだけで抱え込まんと、ちゃんと言わなあかん」 「僕らはこんなことで、負けてられへんやろ?」 「僕らにしかできへんことを、陽と一緒にとことん楽しもよ」 「僕らやったら、絶対に笑って過ごせる」 「笑いとばすことができる!」 「そのためにも、どんな小さなことでも溜め込まずに、ちゃんと声に出して、伝えていかなあかんよな」 「大丈夫やって! 母ちゃんと僕やで!! 陽も幸せや!!」 そう言う夫の目は、先ほどの悲しい目ではなく、力強く、前を進んでいる目をしていた。 そうだ、なんでひとりで溜め込んで、 落ち込んでいたんだろう。 私はひとりじゃないのに、 なんで孤独を感じていたんだろう。 なんで、こんなに辛くて悲しいって、 思ってしまうんだろう。陽は生きているのに。 頑張って生き続けようとしてくれているのに。 私の負の心境に対して「なんで」という想いが強くなり、今までの自分が馬鹿馬鹿しく感じた。 陽が生きて傍に居てくれている。その奇跡は、私達が守っていく。ただ、それだけのこと。 見られるのは仕方がない。 だって、世間でいう普通とは違うから。誰も知らないから。 だったら知ってもらうことが出来れば、何か変わるのかもしれない。 それをどう行動にしていくべきか、 私たちなりのやり方で、陽の生きて進む道を切り開いていこう。 この日、私は再び、陽を守ること。 そして家族の笑顔を守ろうと決意し、行動や考え方を変えていくことにした。 (『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より) 【参考資料】 本書をもとにCBCテレビ『チャント』にて「ピエロと呼ばれた息子」 追跡X~道化師様魚鱗癬との闘い(6月26日17時25分より)が放送されました。

文・ピエロの母/構成:『BEST TIMES』編集部

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