グッチのアレッサンドロ・ミケーレが語るパンデミックによる心境の変化。
多様性やジェンダーレス、文化の盗用など、2015年のデビューコレクションから既成概念を崩し、物事の新たな見方を発信し続けているグッチ(GUCCI)のクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレ。彼のクリエイションを刺激する友人関係や過去の経験、そしてパンデミックによる心境の変化を本誌クリエイティブ・ディレクター・アット・ラージのアンナ・デッロ・ルッソに語る。
アンナ・デッロ・ルッソ(以下・ADR): まずは、最近で一番印象に残った“ジャッキー 1961キャンペーンに記された「ノンバイナリー アティテュード」というコピーに関して質問です。これまであなたは、まず多様性を打ち出し、次にファッションショーでジェンダーレスを訴え、最後にこのバッグを通じてノンバイナリーを訴えました。これは本当に革新的なテーマです。例えば、化粧室は男女で分かれていますが、あなたの考えるこれからのファッションでは男女を分ける必要がないというお考えですか? 新しい世代はまだ性別としての男女を気にしていますが、あなたのようなアーティストからの情報発信により、私たちは時代を先読みします。これほど大胆な試みをしているあなたにとって、こうした障壁、ジェンダーの区別などは今後なくなると思いますか? アレッサンドロ・ミケーレ(以下・AM): 私たちが若い頃は、みんなこのような定義から逃れようとしていました。私は運良く、大都市の高校に行ってからファッションの仕事に就きましたが、ファッション界は幸い、結構自由な空気が流れていました。思ったことを口に出してもいいし、何かしらの形で自分を定義することもできる。ファッション業界での広告写真などのコミュニケーションツールは、ある種の美しさ、ある種の固定観念に縛られてきましたオフィスや業界全体はもっと自由な雰囲気がありました。また今、若い世代が固定観念に縛られず自由でいられる様子を見て、とても興味深いと思っています。90年代に生まれた人の多くは、ゲイであるかどうかを聞くのは……。 ADR: 失礼だと……。 AM: おかしいです。今の20代からはそう見られています。1900年生まれの祖母が「でも、あなたは男と寝たのよね」と言っていたことを、ふと思い出します。最近は時間の流れが速いので、少し前まで私が質問していたことが1900年生まれの祖母の質問に聞こえてしまいます。現代は光速のように世界が変化し、進んでいます。私は変化そのものを愛しています。変化はプロジェクトであり、人生でもあります。また、今日の人にとって、人生のプロジェクトは19世紀のように子作りではありません。現代人にとっての人生のプロジェクトとは、自己を生きることです。人と会い、それをコミュニケートすることです。私たちは非常に興味深い世界に住んでいます。私の最新コレクションでは、新しいことを試してみることができました。しかし、ただ試すにしても、誰にもその結果を保証することはできません。そこで、自分を追い込む必要がありました。自分がギャンブラーだと思って仕事をし、すべてを失う覚悟をもって取り組まなくては、結果的にはすべての賭けに負けてしまいます。 ADR: そうですね。あなたの個人的なコミュニケーションツールであるインスタグラムをフォローしています。あなたのインスタグラムには、文化、歴史、伝統、過去と同時に、信じられないほどのスピード感で、時代に即したコミュニケーションを展開しています。こんなに洗練され、コミュニケーションに対して厳しい姿勢で臨んでいるあなたを理解するのは、年齢層の低い若者たちには難しいと思います。それなのにどうして、私の12歳の甥っ子があなたの正体を知っているのでしょうか?