旭化成の半導体工場火災、スマホ供給網に影響
旭化成の子会社で半導体製造を手がけていた旭化成マイクロシステム㈱延岡事業所(宮崎県延岡市)で、10月20日に工場火災が発生した。消火活動が難航し、4日経過した24日にようやく鎮火した。 今後スマートフォンをはじめとするサプライチェーン全体に影響が出る恐れがある。
高シェア製品も多数
火事が発生した工場は旭化成の半導体事業において、前工程拠点としての役割を持つ。6インチおよび8インチウエハーで構成されており、月産能力はそれぞれ1.2万枚程度を保有するとみられる。シリコンベースのIC製品などを生産する。 旭化成の半導体事業は前工程プロセスで、自社ファブと外部ファンドリーを使い分けている。 微細プロセスに関しては外部ファンドリーを活用する一方、ホールICやカーディオ用IC、水晶デバイスのTCXO(温度補償型水晶発振器)用制御ICなどは、自社で製造を続けていた。 特にホールICやTCXO用制御ICは業界シェアも高く、今後のサプライチェーンへの影響が懸念される。工場自体も今回の火災でクリーンルーム上部の屋根が崩落するなど、壊滅的なダメージを受けており、復旧時期は未定。 代替生産や同業他社への緊急発注など、今後対応策が講じられるとみられるが、高シェアかつ特殊プロセスであることが今後ネックとなる可能性もありそうだ。
スマホと車載向けが主軸
旭化成グループで半導体事業を手がける旭化成エレクトロニクスは、存在感のあるアナログICや化合物半導体技術をベースに事業領域の拡大を目指している。 同社半導体事業は、スマホと車載オーディオ向けを中心に展開。スマホ向けでは電子コンパス、カメラモジュールのオートフォーカスや手ぶれ補正用磁気センサーが代表製品だ。 車載オーディオ向けでは高精度A/D・D/Aコンバーター、ハンズフリー向けの音声処理DSP内蔵LSI、高音質を実現するノイズキャンセラーなど、高級オーディオ向けを得意とする。
稲葉 雅巳(電子デバイス産業新聞)