【全日本フィギュア】初出場の朝賀俊太朗、髙橋大輔さんに憧れ関西大学へ 度重なるケガを乗り越えつかんだ舞台
度重なるケガ 関西大学に拠点を戻す
高校は、スケート生活が軸にできる向陽台高校の通信制を選んだ。学習は大変な部分もあったが、何よりもスケートに費やす時間が増え、調子も上がってきた。また初めてジュニア選手の強化合宿に招集され、トップ選手と同じ時間を共有し、マインドも変わっていった。 しかし、これからシーズンに向けて追い込みをしようという時期に骨盤を疲労骨折。続けて右足首も疲労骨折し、捻挫(ねんざ)を繰り返すようになり、練習量が大幅に減ってしまった。 ケガをした直後はこれまで積み重ねてきたものでカバーできていたが、だんだんと試合で結果を残すことができなくなった。だましだまし詰めた練習をやってみるも、痛みを伴うことが多く、なかなか思い通りに練習できない日々が続いた。 高校2年生の国民体育大会(現・国民スポーツ大会)終了後、今度のためにここでケガをきっちり治そうと再び休養することになった。受験生になることもあり、休養中は進学先について悩んでいた。切磋琢磨(せっさたくま)できる練習環境はよかったが、朝賀自身は下宿しながら競技を続けることに限界を感じており、実家から通うことを望んでいた。 両親と話し合いを重ねた結果、練習拠点を関西大学のリンクに戻し、再び本田コーチに師事することになった。ケガから復帰後、順調に結果を残し、高校3年生のインターハイで2位と大健闘した。また、当初予定に入れていなかったトリプルアクセルを公式練習で初めて成功させるなど、ようやくトップで戦うための準備が整ってきたと実感した。
トリプルアクセル成功、初の全日本へ
今春から関西大学文学部に進学。リスペクトする髙橋大輔さんも在籍していた学部ということもあり、「進学するのであれば文学部」と決めていた。競技は違うが同じ体育会でスポーツに打ち込む学生と一緒に授業を受け、充実したキャンパスライフを送っているという。 今シーズン、シニアに上がることも考えたが、「全日本ジュニアでいい結果を残さずにシニアに上がることはけじめがつかない」という気持ちがあり、ジュニアに残って戦うことにした。 夏にはジュニアグランプリ(GP)シリーズ派遣選考会に参加するも結果を残せず出場はかなわなかった。悔しい気持ちをバネに練習に励み、11月に最後の全日本ジュニアを迎えた。SPは「やってやるぞ」という気持ちが空回りし、まさかの足換えシットスピンで0点に。苦しい滑り出しとなったが、翌日のフリーではトリプルアクセル(3回転半)を決め、全力を出し切り、結果は5位。ジュニア選手の推薦枠で目標にしていた全日本への切符をついに手にした。 試合は結果よりも、「いい演技を観客の方に見てもらいたい」という思いが強い。「自分の思い描いた演技ができるとおのずと結果はついてくる」と考えている。 初出場の全日本は、朝賀の地元である大阪で開催される。スケートを始めてからフラワーボーイとして、また観客として、ずっと見ているだけの試合だっただけに、ようやく出場できる喜びで胸がいっぱいだ。出場するからには、自分自身がいまできることを最大限に発揮し、観客の心に自分の演技を刻みたいと思っている。 今シーズンのSP「The Fire Within」は、スピンとステップですべてレベル4をそろえるべく、プログラムを作り込んだ。特にステップはいままで以上に凝った動きが入っていて最大の見せ場となっている。 またフリーは昨シーズンから継続のタンゴ曲「Buenos Aires winter」。4分間通して、どこを切り取って見ても飽きないように工夫された振り付けになっている。特に最後のコレオシークエンスでは身体全体で音楽を表現しており、「演技後に観客が思わず立ち上がってしまうくらい魅(み)せたい」と意気込む。 今回はフリーで初めてトリプルアクセルを2本入れる構成にチャレンジする予定。全日本で成功させて今後の弾みにしたいと考えている。 長年ケガに苦しみながらも、コツコツと努力を積み重ねてようやく全日本という大舞台にたどり着いた朝賀。地元大阪で、持ち味でもある大きなパワーのあるジャンプを武器に、演技する姿が見られるのを楽しみにしている。
澤田亜紀