安藤忠雄の建築をめぐる、東京散歩ガイド
街中には、著名な建築家による建築物がたくさん。いつもの街を建築視点で歩くと、意外な発見があるかも。気軽に訪れられる、触れられる、商業施設や公共施設の建築物を紹介。
表参道ヒルズ/東京都渋谷区
1920年代、関東大震災の復興事業として建設された同潤会青山アパートの跡につくられた、集合住宅と商業施設のコンプレックス。 〈記憶の継承〉を主題に、長年親しまれてきた街並みの原風景をエッセンスとして抽出しながら現代的な建築に落とし込むべく、さまざまな工夫が用いられている。 建物の過半を地中に沈め、高さを表参道のけやき並木と同程度になるように低く抑えられ、中心にはかつてのアパートの中庭のような広場があり、その周りを表参道と同じ勾配のスロープが周回する。またアパートの一部はそのままのかたちで残されている。 安藤氏曰く、「市場原理の支配する都市にあって、建築はいかにあるべきか――公共性という主題をとりわけ深く考えさせられた仕事だった」という。
東急東横線渋谷駅/東京都渋谷区
〈地宙船=地下深くに浮遊する宇宙船〉のイメージのもと設計された、三層構造の駅。 構成の中心は、地下躯体を貫いて、地下3階のコンコースから地下5階のホームへ至る楕円形の吹き抜けと、それを取り囲む卵型のシェル。ダイナミックな空間をつくり出す構成だが、方向感覚を失いがちな地下空間でランドマーク的な役割を果たすだけでなく、安全性や吹き抜け構造による自然換気ができる点など、実用性も兼ね備えている。 「毎日数十万人の人間が往来する極めて公共性の高い都市施設だからこそ、消費されない強さと、環境の世紀に応える確かな視座をもった空間にしたいと考えた」と、安藤氏。
東京大学 情報学環・福武ホール/東京都文京区
東京大学本郷キャンパス内に2008年3月に竣工した、大学創立130周年を記念してつくられた200人収容のホールをもつ校舎施設。キャンパス内最古の建造物である「赤門」に隣接する。 間口100m、奥行き15mの細長い敷地には、樹齢100年を超える見事なクスノキが繁っており、キャンパスの緑地軸構成の踏襲、既存のクスノキの風景の継承を前提に、キャンパスの新たな刺激となるような〈場〉の創出を主題として計画に取り組んだという。 樹木よりも高くならないように地下空間を創出し、地下と地上をつなぐ階段状のドライエリアも設けた。建物前面のコンクリートの壁は、背後のオープンスペースの求心性を高めるのと同時に、キャンパス内に意図的な空白、〈間〉が生まれることを期待してつくられた。 ※外観のみ見学自由