世陸リレーでの日本銅メダル快挙の裏に隠れたドラマ
予想外のクライマックスに、桐生は「いつも1番の選手でもこんなことがある。ちょっと気持ちの整理がつかないですね。最後まで走ってほしかったですけど、何があってもボルトは憧れなので、それは変わらないです」と話した。 そして、銅メダルを獲得したことについては、「100mや200mを見ていたときには、ちょっとしんどい気持ちもあったんですけど、今回はリレーのために来ました。日本選手権の100mで4位に終わりましたが、それでも僕を支えてくれた人たちのためにも、ロンドンでメダルを獲って帰ると心に誓っていたので、本当に良かったです」と笑顔を見せた。 昨年のリオ五輪の銀メダルに続いて、世界大会で二大会連続のメダルを獲得したが、今回の快挙は偶然と必然が生んだものだと感じている。ボルトの途中棄権などは偶然の産物だが、当初予定していたメンバー二人を交代しても、戦闘力を落とさなかったことは、日本の実力が確実に高まっていることを物語っているからだ。 今回、日本の“救世主”となった藤光は、昨年のリオ五輪でも「補欠」を経験。その後は引退が頭を過ったという。「オリンピックを終えてどうするのか、考えました。まだまだやり残したことはあると感じましたし、完全燃焼はしていませんでした。自分が納得できるまでチャレンジしよう、とイチから奮起したんです」と現役続行を決意。ロンドン世界選手権では、個人種目の出場権をつかむことができなかったが、リレーメンバーとして1~4走のどこを任されてもいいように準備をしていたという。そして、今回はスーパーサブとして存在感を発揮した。 「昨年からの『走りたい』という気持ちが、1年越しに叶った感じです。補欠で日本代表に入ったので、準備だけはずっとしてきました。世界大会は何があるのかわかりません。『行け』と言われたら、いつでも行ける気持ちでいたので、動揺もなかったですし、スッと入れたと思います。こっちに来てから日に日に調子は上がっていたのを感じていて、今日が一番の状態でした。昨年の銀メダルがあって、今回はものすごく注目されていました。そのなかで、昨年のメンバーがふたり替わってもメダルを獲得できたことは、選手層の厚さを示すことができましたし、今後に向けても大きなことだと思います」 日本の男子4×100mリレーは世界大会の“メダル常連”になりつつある。リオで銀メダル、ロンドンで銅メダル。2020年東京五輪では「金メダル」を期待してもいいだろう。 (文責・酒井政人/スポーツライター)