<ボクシング>村田と戦った男がTKOデビュー
プロボクシングのB級トーナメント、スーパーウエルター級5回戦が14日、後楽園ホールで行われ、ロンドン五輪金メダリスト、村田諒太(帝拳)のアマチュア最後の対戦相手だった竹迫司登(23歳、ワールドスポーツ)がプロデビュー。横田和之(29歳、中野サイトウ)を2回1分55秒TKOで下した。竹迫の夢は「いつか村田さんと戦うこと」だ。
ズシン、ズシンと一発、一発のパンチが響くように重たい。 1ラウンドの終了間際だった。ロープを背にした竹迫は、左のボディを効かせると、ワンツースリーまでのコンビネーションを最後はテンプルに決めて8戦5勝(2KO)3敗のキャリアのある横田をキャンバスに這わせた。横田も“グリーンボーイに簡単に華を持たせてなるものか”と、一度は、立ち上がったが、2ラウンドに狙い打った右ストレートをヒットされるとレフェリーが間に入って試合を止めた。鮮烈なTKOデビュー。 「左フックと右ストレートは手ごたえがあった。アマチュアでは、ああいうクリンチ際でパンチは打ってはいけないんですが、プロではいいですからね。もっと緊張すると思ったけれど、意外と力も入らずに動けた。それにプロはグローブが軽いですね。斎田会長と藤原トレーナーがずっとアドバイスをくれるしアマチュアと違って心強かったです」 大阪の寝屋川市出身。小学校のときから元WBA暫定世界Sウェルター級王者の石田順裕の指導を受けて、チビッコボクシングを始め、「石田さんの世界戦を目の前で見て感銘を受けた。俺もプロになろうと決めた」と、茨木工科高校卒業と同時にプロ転向するつもりでいた。だが、「まずはアマチュアで腕試しをしよう」と龍谷大へ進学。3年前の8月26日、当時、龍谷大のボクシング部に所属していた竹迫は、和歌山で行われた国体の近畿ブロック予選で、ロンドン五輪で金メダルを獲得後、凱旋帰国試合となった村田諒太と拳を交えた。 和歌山の体育館にファンとマスコミが多数押し寄せる大フィーバーの中、手も足も出ずに1ラウンドに2度ダウンをとられ2ラウンド56秒にRSC負けを喫した(プロで言うTKO負け)。 「相手は世界チャンピオンですから自信になればと、胸を借りるつもりでした。でもいざ村田さんの前に立つと、何をしていいのかわからなかった。プレッシャーが強く、カウンターも体も強くて、おまけにガードが固いので、どこを打っていいのかもわからないままレフェリーに試合を止められました。今でも記憶にずっと残ったままの経験になりました」 竹迫の心の奥底に3年前の村田戦の負けが錘のように沈んでいる。そして、その村田は、この試合を最後にアマチュアからプロへ転向している。これもまた運命的だ。