ウクライナ軍、相次ぐ無断の戦線離脱-人手不足が深刻化
(ブルームバーグ): ロシアがウクライナへの全面侵攻を始めた日、ロマン・ソロモニュクさん(45)は自ら志願して兵士になり、家族を驚かせた。だが、それから2年半以上がたち、彼は戦線を離脱した多くのウクライナ兵士の一人となった。
ソロモニュクさんは初め、ロシア国境付近で塹壕(ざんごう)を掘った。その後、シャヘド無人機(ドローン)の撃墜もした。しかし、高圧的な上官と対立し、現在は部隊を無断離脱した容疑で指名手配されている。
検事当局のデータによると、ロシアの侵攻が始まった2022年以来、ウクライナは任務を放棄したとして、9万6000件近くの刑事事件を起こしている。件数は過去2年で6倍に増加しており、大半は今年になって立件された。
ウクライナ軍がロシアの進軍を食い止めようとする中、兵力不足はより深刻化している。一方で、ウクライナ政府は経済を混乱させ、戦争に疲れ果てた国民を動揺させることになるとして、徴兵を回避しようとしている。その結果、一部の部隊は休む間もなく無期限で展開を続けている。交代するだけの新たな部隊は不足している。
疲弊
ウクライナのゼレンスキー大統領は今月、ラジオのインタビューで、多くの兵士がとにかく疲れ果てていると述べた。ただ、ゼレンスキー氏は兵士の除隊期限の設定に消極的で、ベテラン兵士たちは、若い世代を中心に何百万人もの男性が兵役に就かない中、なぜ自分たちが命を危険にさらさなければならないのか、疑問に思っている。彼らにとって、無断離脱は唯一の休息であり、回復し、家族との時間を大切にするチャンスだ。
ウクライナ軍法執行部のオレクサンドル・ハリンチュク氏は「疲労も一因。あるいは、妻が出産間近など、個人的な事情もある」と言う。「または、小隊を率いる者が他に誰もおらず、司令官が休暇を許可しなかった場合もある」と述べた。
ウクライナ政府は無断離隊した兵士の公式な人数を発表していない。ハリンチュク氏も「機密情報」だとしてコメントを避けたが、無断離隊した兵士の40-60%は自主的に戻ってくると強調した。兵士が完全に離隊する脱走は、より重大な犯罪とみなされるが、検事当局のデータによると、その頻度は低い。