中国テック企業中核人材が直面する「35歳の転機」
中国テクノロジー企業の急成長を支えてきた中心的な人材は、現在多くが30代半ばになっている。これらの人々が直面する「35歳の転機」とは何か。(JBpress) 【写真】テクノロジー企業が集中する、深圳南山科技園は夜10時でも人通りが多い 今まで花形といわれてきた中国のテクノロジー企業(テック企業)において、「35歳の転機」という現象が起こりつつあります。 中国のテクノロジー企業では猛烈な働き方をする人が少なくありません。従業員の過労死や過酷な勤務体系が非難されることもあります。 「朝9時から夜9時で週6日勤務、最後はICU(集中治療室)送り」を意味する「996.ICU」が問題視されていることは、以前の記事でお伝えしました。 中国で急拡大する「職業掛け持ち」の実態とは https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62813 そのほか、長時間労働が常態化したテクノロジー企業の労働慣行に関する記事なども見受けられます。 中国EC「拼多多」、社員死亡の悲劇に高まる批判 https://toyokeizai.net/articles/-/403502 とはいうものの、他の業界と比べて初任給が2倍以上というような恵まれた報酬、個人の成長を実現できる環境などによって、多くの優秀な人材が引き寄せられてきました。そして、そのような人たちが、デジタライゼーションやイノベーションを支えてきたのは間違いありません。 中国テクノロジーの根幹ともいえるデジタル産業が勃興したのは、2010年代前半からです。現在の35歳はその成長期を支えてきた中心的な人材です。その人々にどのような転機が迫っているのでしょうか。
■ 30代で転職した2人の生の声 その35歳を間近に控えて転職した趙さん(36歳)と魯さん(36歳、いずれも仮名)というお二人に、これまでのキャリアについてお話をうかがいました。 趙さん「僕らの世代は理工学部で大学を卒業した当初から、デジタルサービス開発の最前線で働くことができました」 魯さん「業界全体が猛烈な働き方をしていたと思うし、碼農(プログラマーを揶揄する、中国ネットスラング。農家のように黙々と長時間作業をする様子に例えている)という呼称がぴったりだったと思います。とにかく他社よりも少しでも早く製品をリリースすることが、会社の利益につながっていました」 「職場や同業の開発現場にもいるのは20代の人間ばかりで、35歳なんて遠い未来に感じていましたね。待遇もとても良かったし、開発プロジェクトが完了するたびに数カ月分のボーナスが支給されていました」 趙さん「きつい環境だったのは事実だけど、25歳で転職した時も引く手あまただったし、自分の優位性は変わることがないと思っていました」 「でも30歳に差し掛かるころから、状況の変化に気づきました。社内や業界にはどんどん若手が入ってくるし、何よりも長時間残業が必須の開発スピードに自分がついていくのが難しいと、日々感じ始めたのです」 魯さん「妻子とすごす時間が不規則になってしまうし、そもそも結婚するにも交際する時間を確保するのが難しかったです」 「20代のころよりも給与は倍以上に増えたけど、それ以上に会社から求められる成果が高くなるという状況が続きました」 「自分が学んで実践してきた技術や知識が、すさまじい勢いで進化してアップグレードが必要となることも転機になりました。最終的に、開発現場だけで競争するのではなく、経験を生かしてマーケティングの方に方向転換をすることにして、同系列ではあるけど別の企業に転職しました」 趙さん「僕は今まで関係を持っていなかったほかの会社で開発の仕事を続けています。前の会社だと毎年すごい数の新人が入ってきて、激しい社内での競争があり、息苦しさを感じていましたね」 ■ 開発体制の変化がもたらしたもの 花形企業でビジネスの最前線にいるという立場にありながら、その人が危機を感じる理由はどこにあるのでしょうか?